マシリト博士が、音楽ブログに目を通すと
ここ数週間は更新できないでいますが「戦場のメリークリスマス」という曲の分析をずっと続けています。あれです、あの曲です。
あれの作曲者は、皆さんもご承知のように、今年3月末に亡くなられました。
彼の楽曲は何か一貫したロジック、メソッドがあると、私に限らず世界中のファンは気づいていたと思います。
それを抽出できないか… 私のささやかな野心でした。そして、どうやらできそうだ、ひとに語って聴かせられるところまで、彼の作曲メソッドに輪郭を与えられる ―― そんな手ごたえを、今年に入ってより「ラストエンペラーのテーマ」分析を続けながら、自分の中で感じてきました。
あれの分析とその解説を、連載っぽく続けていくうちに「ああ、これってまんが技法の分析・解説と重なるところ大やね」と感じること多々でした。
「視線誘導」とか「吹き出しの配置」とかのタームを使って、まんがの文法を可視化してみせた画期は、この本あたりからだと思います。懐かしいな。2004年刊。私が実際に目を通したのはもっと後になってからですが。
かの夏目房之介氏がブログ「で?」でこの本の画期性を称えながらも「『コマの圧縮と拡大』とかのタームって俺が最初に作ったのに言及がないのはなんかなー」と不機嫌混じりだったのを思い出します。
あ、そういえばこの本の著者さんがもっと後に同種のものをウェブ講座として連載してたことがあって、それを房さまのブログに「こんなんありまっせー」と投稿したら「おおありがとねー」の返事とともに次の更新ぶんで謝辞まで入れてもらいました。教授一年目の頃だったと思います。
私の楽曲分析、というか分析の視覚化にあたっても、まんが文法の解読と応用語りのメソッドが、半ば無意識ににじみ出ています。「ラストエンペラーのテーマ」分析をブログ連載していきながらだんだん自覚していました。
こんな風に視覚化しながら「ああ、まんがの視線誘導を解説してる気分だわ」と思ったり。
せっかくなのでこれも紹介します、かなり前のですが「天使の3P」という小学生女子バンドのまんがを、私なりに技法分析&解説したものです。
以上、長い前説でした。ここからが本題です。
楽曲分析とその解説を、ブログ、つまりテキスト with 画像 & 動画 で行うにあたっては、まんがの文法が活かせるかなってお話です。
私が楽曲を語るときは、楽譜にこういう風に「ファ」とか「ミ」とか書き込むようにしています。
「曲を分析するときは、各音符を必ずドレミで口ずさんでみろ」と、ある優れた楽曲分析者さんがある自著のなかで(少し違う表現ででしたが)述べてらして、目からウロコが落ちたことがあります。
そのメソッドに感銘を受けて、以後こうやって音符のひとつひとつをドレミ化して分析し、そして解説するよう心掛けています。
ただ、これでも分かり辛いんですよね楽譜が読めない方には。
映画「アマデウス」のなかで、主人公である作曲家さんが、憎むべきライヴァル・モーツァルトの生楽譜を手に取って、目を通したとたんに脳内でその曲が再生されるというシーンがありましたが、あれは半ばギャグです。
本当にそういう能力を磨いてしまった方もいらっしゃるそうですが、ほとんどの音楽家にとっては「んな便利な能力あるかっ!」です。
そういうわけで、私のブログでは、ドレミ付き楽譜といっしょに、楽譜の再生動画も付けるようにしています。
こんな風にです。
しかしこれでもなんだかわかりにくいのですよ時間をおいて読み直すと。
なんでかなーと思って考えてみたら、楽譜の動画再生で、そのパートの音を実際に聴いてもらって、楽譜上を再生ライン(上の動画内で、薄く水色のオビになってるところ)が右に滑っていく様もいっしょに見てもらっても、それでもピンとこないひとはこないなって気が付きました。
実際に鍵盤に指を置いてもらわないと、体でわかってはもらえないんだなって…
仮想ピアノを付けたらどうだろう? いいやそうしても弾けないひとは弾けないから解決にならないよ、じゃあどうするの、うーんどうしよう ――
ええいゲーム機のコントローラーと同じで、とにかく指で押しまくるように仕向けたれ!
ほれ~縦下にスクロールしながら、赤の▶マークが出てきたら、とにかく押すんやそこ、そうすれば楽譜が動いて何か奏でるで~
ずっと前にですが、とある予備校の講師さんが、そんなにおつむよくない生徒さんたちのコースで授業するときのコツを語っていました。「とにかく黒板にいっぱい書き込んで、それを書き写させるんや。そうすれば毎回達成感を抱かせてあげられるやろ?」
わからせるのではなく、手と目を連動させて、わかったような気にさせるのがコツや、とは言っていなかったけれどそんな風にも受け取れる発言でした。
鍵盤弾けへん子らには、動画の再生▶マークを押させて、鍵盤で実際に音符を鳴らして「ああなるほど~」と腑に落ちる感覚を、疑似的に味わってもらえれば、さしあたってそれでええんや ――
そういう割り切りというか悟りの域に、私は達したのでした。
今は「戦メリ」分析の続きを綴る余裕が、ないわけではないけどたっぷりはない日々を過ごしているので、続きの再開はもっと後になると思いますが、いずれ再開するつもりです、このメソッドをさらに磨いて。
このあいだこんな本を読んで、味わい深く読みました。「ドラゴンボール」の育ての親で、あの週刊少年ジャンプの歴代最強編集長ともなったマシリト博士による、正しい少年まんがの作り方指南書です。
黄金期「ジャンプ」まるだしでいい味です。そういえば昭和「ドラクエ」もこの方が噛んでいたのでしたね。子どもがゲームコントローラーを指で高速操作する体感と、まんが雑誌を超高速でめくって没入する動作が、同じものだと彼は把握していたような気がします。
縦スクロールでまわるウェブの世界で、テキスト主体で画像と動画はサブという形式で、楽曲の分析と作曲への応用を語っていくにあたっては、どんな風にマシリト思考法を活かしていったらいいのだろう…
そんなことをこの数週間、ときどきたまにふっと稀に考えています。
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