神秘体験を音楽にする、ガイナックスの終焉
Abstract: In this analysis, I will examine and analyze the most enigmatic chord progression composed by Ryuichi Sakamoto for the anime film "Royal Space Force: The Wings of Honnêamise" (1987). Notably, the top notes of the four-note chords constructed from perfect fourth intervals form a pentatonic scale. This piece plays during a pivotal scene where the protagonist escapes Earth's gravity and, as the first human to gaze at Earth from space, experiences an awakening. The use of the pentatonic scale is likely chosen because it is a universal musical scale, making it appropriate to musically represent the protagonist's awakening upon reaching an unknown territory for humanity. The use of these four-note chords constructed from fourth intervals might be Sakamoto's way of expressing a state liberated from the tonal gravity inherent in chords built from thirds. Incidentally, the piece concludes with a gentle emergence of a four-note chord, where one of the intervals is a major third instead of a perfect fourth, as if to portray the protagonist regaining a bit of composure after the exhilaration of awakening.
前から一番気になっていたのは、ここの和音。
龍一教授が生涯鬼子として遠ざけたアニメ映画「王立宇宙軍」。そのなかで、主人公が宇宙空間で何か悟りを開いてしまうシーンの音楽です。終わりのほうです。うろ覚えなのであまりよく覚えていませんが、終わりのほうでなんか覚醒するところがあって、この曲が鳴るのです。
本当はもう少し長いので、耳コピでちゃちゃっとコンパクトに整理したのがこれどす。
ドレミをふっていくと・・・
拡大したほうがいいのかな?以下の和声進行を突き止めたのは我ながら偉い! とコンマ数秒思いました。主人公が宇宙の真理(らしきもの)に覚醒する瞬間の音楽。
この和音、見てのとおり四度音程の縦並びですね。
四度音程の縦ならび和音は、風通しがいい。地球の重力から離れ、宇宙空間からの眺めに、何かに覚醒する主人公・・・
和音の基本は三度音程の積み重ね。それが宇宙空間(というか地球周回軌道に乗ったカプセル)に達した彼は、四度音程の和音に迎えられる。
面白いのは、ここで「ファ♯」つまり黒鍵の音が混じることです。
一瞬転調というか調性がスライド移動するのです。もはや調性という引力に縛られていないぞ、みたいな。
ところでドレミをこんな風に付けることもできます。
拡大すると・・・
このドレミ解釈の場合でも、以下の和音は黒鍵にはみ出すのがわかります。
それから旋律(緑でドレミを付けてあります)をよっく見てみてください。
「小さくて見えへん」 そうですか。以下、ドレミで綴ってみます。
♪ レ~ミ~、ドラ~、レ~ミ~、ドラ~、ソ~ミ~、ミ~
五音音階です。ドレミソラ音階。人類普遍といわれる音階。
私が推理するに、作曲者はこの旋律を
♪ソ~ラ~、ファレ~、ソ~ラ~、ファレ~、ド~ラ~、ラ~
と読み替えて、そして四度音程和音を付けていたようです。
実は終わりの和音については、四度音程でない音が鳴ります。
緑で括ったこの音、もし「ファ♯」なら「シ」と四度音程になるのですが、見ての通り「ソ」が鳴っています。
見ての通り「ソ・シ」つまり長三度音程。これによって、少し安定感が戻ってきます。
覚醒による高揚が、少し落ち着いてくる感じ、しますね。