[三体/劉慈欣を読んで] 宇宙より広い生命、愛そして縁起について
三体を読んだ。久しぶりに深い思考のきっかけになる物語に触れた気がする。
三体は世界で2900万部の発行部数を誇る人気爆発中の中国SF小説である。尊敬する知人が勧めていたので手に取った。
文化大革命によって科学者が殺されるシーンから始まり、なんと数千年のスパンで物語は展開していく。
その中で宗教の対立、政治、人間愛、尊厳や物理学など様々なテーマを軸に物語は進む。
よって全体も長く、三体I, II, IIIとそれぞれII と IIIは上下巻で構成されているため計5巻の超大作となっている。
読んでいて、本当に大切なことは実学ベースの本ではなく文学に書いてあると感じた。つまり抽象度の高い、本質的なメッセージというのは単純な言葉では説明ができず、文脈の中でしか実感を伴って理解することができないと。
それこそが宗教であり、文化であり、純文学であると実感した。
村上春樹もそういえば似たようなことを言っていたことをふと思い出した。
社会で生きていくため、知識やスキルを戦略的に身につけていきながらも、人間として大切なことをしっかり意識したいと感じた。
さて、三体の話に戻ると、物語の節々で人間の本質的な脆さと強さが描かれていて面白かった。総体としての物質が一定であり、そのなかで生命の第一欲求は生存である以上争いは絶えない、ということは全てにおいて言えることだなと思った。
三体の中で、一番大きなメッセージ(少なくとも自分にとって)は以下の文だったように思う。
全てが終わりに向かって進む、諸行無常の宇宙の中で生命は死を経ても永遠に紡がれていく。
曖昧さの中で愛は残り、縁起によって広がっていく。
三体おすすめです。