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「生まれた場所で不利益を受けるのって、いやだな。」Setouchi Startups 共同代表パートナー山田邦明インタビュー

はじめに

この記事は、

・現役高校生のわたし橙香が
・高校生向けのインターンを募集している
・瀬戸内エリアで活躍する起業家・経営者にインタビューを行ったもの

となっています。

今回のインタビューは、瀬戸内エリアを中心にしたベンチャーキャピタルの世界で活躍するSetouchi Startups 共同代表パートナー山田邦明さんにお話を伺いました。

画像の最前列、1番左側に座っているのが山田さん。

Name : 橙香(とうか)
現役高校生
この記事でインタビューをする人。

Name : 山田邦明さん(やまだ くにあき)
弁護士
Setouchi Startups 共同代表パートナー
この記事でインタビューされる人。

VCとは?スタートアップとは?瀬戸内エリアという”ポジショニング” 『事業内容』

「今展開されている事業の内容をお伺いしてもいいでしょうか?」

瀬戸内スタートアップスというベンチャーファンドをやっていて、LP(リミテッド・パートナー)と呼ばれる方々からお金を預かり、それをスタートアップ投資するというビジネスです。」

「具体的にはどんな方々からお金を預かって、投資をしているんですか?」

「プロペラ会社の会長さんとか、あとはエンジェル投資家といわれる、スタートアップやこの地域に想いがある個人とかから集めています。」

「なるほど、”地域”というつながりから出資者を集めることも多いんでしょうか?」

「どうなんだろう?他にもケースはあると思うけど、うちは瀬戸内エリアを良くしたいっていう人たちを中心にお金を集めましたね。」

「ベンチャーファンドというものが企業・個人のある種中間にあることには、どのような意味があるのでしょうか?投資家と企業の、仲介?みたいな?」

「”仲介”はちょっと意味が広くなりすぎるかな。たとえば、スタートアップという投資先を発見することはとても難しいわけですよ。」

「直接投資できるだけのノウハウを持っているわけでもないし、見つけたところを事業の良し悪しも含めて判断することが、自分の事業領域だとできるけど、そこから遠いところ。たとえばプロペラをつくるところから見てAIや教育は遠いよねっていうところの、目利きだったりとか。」

「あとは起業家という種の人間ってまだまだ世の中に対して少なくて、特に瀬戸内エリアっていうところの起業家の発掘がすごく難しいんですけど、それができるから、中間にいる価値がある。

「なるほど、ありがとうございます。ちなみに、ちょっと気になったんですけど、いわゆるベンチャー企業とスタートアップ企業ってどういう違いがあるんでしょうか?同じ意味?

「喧々諤々いろんな議論があるんですけど、ベンチャーはけっこう大きいとこでも言うんですよ。有名なところでいうとメルカリとか。」
「どっちかというと”気概”なんです。やるぜっ!もっと成長していくぜっ!みたいな、冒険・アドベンチャーのベンチャーだから。」

メルカリってベンチャーなんですか!?

「あとDeNAとか、ソフトバンクとか、サイバーエージェントとか。」

「そういった辺りも全てベンチャー企業なんですね…….」

全部ベンチャー。今だとすごく大きいけど、当時はほんと一人の人が立ち上げた会社なんで。だけど、あの辺はスタートアップとは言わない。」

スタートアップはそれとは違って、色々定義はあるけど、簡単にいうと短期間においてJカーブと呼ばれるような成長をする企業のこと。ゆっくり伸びるんじゃなくて、最初は赤字だけど急上昇して、基本的には上場とかM&Aとか、イグジットというものを目指していく。」

「イグジット?」

「そう、そのまんま出口の英語。たとえば、株式会社には株式っていうものがあって、その一部をお金と交換、購入しているんですね。ってことは、株式を買った人たちはどうやったらするかっていうと、スタートアップ企業がめちゃめちゃ成長して時価総額が上がった場合なんですよ。」

「時価総額1億円の時に1000万円で株を買ってたら、会社全体の10%がもらえる。その10%を持ったまま時価総額が100億円になったら、その1000万円が100倍の10億円になってるわけじゃないですか。それで得をするというのがベンチャーファンドのモデルなんですよ。」

「時価総額が上がっても、最終的に売れないとだめだから、売却するための方法として上場とか他の会社に買ってもらうとかっていうところを目指すのが大前提。」

「じゃあ、ベンチャーファンドが間に存在していないと、そもそも円滑な投資というものができない場合があるということなんでしょうか?」

「そうだね、とはいえさっきスタートアップってJカーブって言ったじゃん?ってことは、最初は赤字なんだよね。だからシンプルにお金が無い。でも最初のうちを乗り越えさえすれば急上昇すると、ある種信じているわけで、この最初の部分を負担するのがスタートアップから見たVC(投資会社)の基本的な役割。
「さらに、たとえば急上昇し続けるために広告費を出したりとか、製品を開発するためのエンジニアをたくさん雇わないといけなかったりするから、ここにもお金が必要。これは売り上げとか利益じゃないところでお金を集める必要があって、そのためにもVCがある。」

「なるほど、出資者と出資される企業があって、その間にベンチャーファンドがあるという構図は、いわゆる普通の株式投資とはどんな違いがあるんですか?」

「普通の株式投資で橙香ちゃんが今想像しているのって、上場株だよね。」
「上場株って概念が逆で、上場したら誰でも買えるようになるんですよ。上場するまでは誰でも買えはしないんですよ。実はその普通だと思っている、公開株って言うんですけど、そっちの方がレアパターンなんです、非公開株が原則。」

「上場株は誰でも買えるところに行くから、誰でも値段が付けられて。じゃあそうじゃなかったら、誰が株価を付けるのか?
いろいろあるけど、要はその会社がどれだけ伸びそうかが判断されて株価が付くのが原則なんです。それを評価するのがVCと呼ばれる僕らみたいな立場の人間と、エンジェルと呼ばれる個人で非公開の株を買う人の二種類。」

「天使みたいにありがたい存在だから、エンジェル?」

「たぶん、そういうところから語源が来ている。」

Jカーブでいうところのはじめの赤字の部分を乗り越えられなかったらめちゃめちゃやばいから、ここをVCにつないでもらって投資してもらうのは、スタートアップ企業にとってはすごく重要なことなんですかね。」

「うん。とも、いえる」

「じゃあ逆に、今まで”Jカーブ”というものが持て囃されていたんですよ。短期間における急成長だから、いいなぁって言われてたんです。だけど別に赤字でやらなくても頑張って稼いで、Jの形じゃないけど、Uカーブの半分くらいのをやればいいじゃん。っていうのが最近熱量高まっています。」
「ただどっちが良い悪いじゃなくて、方法論としてそういうものがあるよというのが重要。」 

「当たり前ですけど、ベンチャー企業の在り方や投資のやり方も、様々あるんですね。」

「多様な投資家の方々の中には、VCという視点から見て何か共通しているようなところがあるものなんですか?」

「ズルい言い方になるけど、違う所と同じ所があって、シンプルに成功してほしい、投資した先がうまくいってほしいというのは多分全員思ってるんですよ。で、そこにもうまくいくの定義が何種類かあって、投資した金額よりも価値が上がるようになってほしいというところまでは大体一致してるんですよ。でもそればっかりだと、たとえばいま世の中でウケる・お金になるというところに集まって、そうじゃないところにお金が集まらなくなるじゃないですか。」
「だから、そこからちょっとだけ距離が離れたところというのがいろいろと議論されていて、たとえば経済合理性的にはそこまで大きくないかもしれないけど、社会性はめちゃくちゃでかいからって投資する人もいるし。これをインパクトファンドとか、ソーシャル界隈とかって言ったりするんですけど。」
「逆に、僕らはすごいわかりやすくて。”インパクト”の文脈には乗っかるんですけど、瀬戸内のエリアにしか投資しない。そんなこと、誰も思ってないじゃんっていう特殊性はあったりする。あんまりそういう言い方好きじゃないけど、”地方創生”みたいなところで扱われる銘柄。」

「それは、瀬戸内だけにエリアを絞ることによって相対的なアドバンテージを得よう、みたいな?」

「ポジショニングかな、どっちかっていうと。VCって東京にいっぱいあるんですよ、じゃあ瀬戸内にあるかって言われたら、会社の一部としてやってる投資部門とか銀行の一部として投資してるところとか以外の、ぼくらみたいな完全に独立してるところって瀬戸内には1個しかない、ぼくらしかいないんですよ。
地方のVCは北海道・東北・大阪・京都・福岡にに一つずつかな?そのくらいしかない。」

「しかもそのうち、ぼくら以外のほとんどはエリアを絞ってない。その地域には在るんだけど、それ以外のところにも投資をするところも多いんですよ。うちは、瀬戸内だけ。っていう、尖り。リスクはバネ、誓約と制約。」

「”縛り”だ」
「投資をするエリアを絞ることが、ポジショニングというだけでなく、瀬戸内の素晴らしい企業を沢山見つけることにも繋がっていくんですね。」

「もちろんもちろん!やっぱり現地に居て、ここにいるよ!ってことを露出して、人に会っていかないと出会えない企業がたくさんあって瀬戸内に絞っていることでそれができてると思ってる。
「こないだBLAST SETOUCHIっていうイベントをやったり、今度テレビをやったりもするんですけど、それによって、瀬戸内エリアにおいてスタートアップをやる/投資を受けるっていう時の第一想起を手に入れている。これがまあ、ポジショニングの戦略ですね。」

「元々そういうのが得意って言うところもあるんですけど、ぼくも一緒にやってる藤田さんも、すぐメディアから、見た目から考える。」

「そういった見え方を工夫する戦略によって、自分たちがいまどういう立ち位置で活動しているのか、周りにもわかりやすく示して、自分たちが活動しやすくしているんですね。」

「まさにその通り。マーケット思考って言ったりするんですけど、たぶんそれが相対的に得意なんだろうね。ただそれを揶揄する人もいるから、あんまりオープンには言っていないけど。」

「市場ばっかり見やがってよぉ~みたいな。」

「ウケばっかり狙いやがって~みたいな。」

「その人たちと、十年後も美味しく酒を飲める」 どうして、瀬戸内なのか?

「山田さんは、どのような思いでVCのお仕事を始められて、いまも続けられているんですか?」

「元々東京で働いてたんですけど、良い悪いは一旦置いておいて、スタートアップだとか投資を受けるとかがある意味普通のことだったところにいたんです。」

「だけどこっちに戻ってきていろんな人に会って、直接的に言うと、この人がもし東京で同じように事業をしていたら、何倍も早く成長してたし何倍もうまくいってただろうなみたいな人に、結構会ったんですよ。
じゃあ東京行けよ、って言うのは簡単なんですけど、たとえば家族のことだったりとかしがらみとか、行けない理由がやっぱりたくさんあって。」

「それができないから、東京に行けないっていう理由だけで。生まれた場所で不利益を受けるのって、いやだな。っていうのがありまして、そのなかでやれること・やらないことはいっぱいあるけど、一番は作りたての会社にとってエクイティ、株式みたいな形でお金を調達できる環境が瀬戸内エリアに限りなくゼロだと。」
シードエンジェルラウンドと言われる、会社が大きくなってから投資しているところはそこそこあるんですよ。でもさっき言ったJカーブの一番最初の部分に投資するところは、僕らがつくったタイミングではほぼなかったので、じゃあやろっかって感じで始めました。」

「そんなきっかけもあって、瀬戸内という地域にフォーカスしていくことになったんですね。」

「まあ生まれたところというか、今いるところっていうのもあるし。
”これができたら、今いるところで出会ってる人たちは、もっと幸せになるな。”とかもわかるし。」

「あんまり、”地域おこし”という気持ちで活動していないんですね。」

「あんまない。でも、地域をおこそう!って、何するかわかんなくない?」

「確かに、どこがゴールなんだろう?という気持ちはあります。」

「そう、誰の顔を浮かべてるのかもわからないじゃん。でもさっき言ったのって、僕らの中で明確に顔が浮かんでいる数人がいて、その後ろには似たような課題を抱えてる人がいるわけじゃん。
その人たちのためにっていうと言い方あれだけど、その人たちがハッピーになるとぼくらもすごい楽しくなるし、良い酒が飲めるわけですよ。だからそういうことのために、その人たちと十年後も美味しくお酒が飲めるようなことをやりたいから、今からやっている。

「ある意味で、未来への”投資”なんですね。」

「いやもちろん。お金だけじゃなくて、自分の人生とか時間とかも投資してる。

「いいこと言いますねぇ。」

「いいこと言うでしょ。というか、ふつうに思ってることなんだけど。笑」

山田邦明さんの学生時代

「学生時代の話も聞きたいです。どんな風に過ごしていたんですか?」
「例えば、高校3年生の、冬とか。」

「高3の冬か。でもふつうに友達と楽しく遊んでたよ。彼女とはなんとなく険悪になってる頃かも。」
「結局、次の4月にその子に振られて、それが苦しくて弁護士になろうとしたから。振られて辛くて、辛いことを忘れるためにもっと辛いことをしようと思って、日本で一番難しい試験を受けようとした。

「高難易度だけを求めて司法試験に行ったんですか!?」

「まじで、もっと辛くなりたいっていうだけ。」

「そういった頃の経験も含めて、いまにつながっているんですね。」

「どうなんだろうね。でも真剣に頑張ったのは今振り返ると気持ち良かったよね。もっとコスパよくできたなって今では思うけど、真面目にやってましたね。」

高校生としたいこと!

「最後に、私たち学生が瀬戸内スタートアップスさんとお仕事をするとなったら、どういったことが一緒にできるんでしょうか?」

「高校生だったら、スタートアップとか起業とかに興味のある高校生たちが集まるイベントを一緒にやれるといいなと思っていて。ぼくらってそういった人たちにたどり着くためにいろんな高校に話に行ったりしてるけど、高校生たちのまわりにも、話を聞いて初めて「自分って興味あったんだ」と思う人もいると思うので。

「たとえば、僕とか藤田さんと一緒に、起業やスタートアップに興味のある高校生が集まるイベントを、設計する高校生とかに来てほしい。一緒にイベント作ろうぜ!みたいな。そこに中高生とか大学生とかがきて、みたいな場をインターンに来てくれた子とつくっていけたらいいなあ。

「その空間を作っていくのが高校生であることにも、意味がありますよね。」

「うん、あると思う。」
「あと、イベントってビジネスのめちゃくちゃ本質的な要素がたくさん詰まってるんすよ。たとえば来てくれた人がイベントに価値を感じてくれたら”ありがとう”って言葉になるし、感じてくれなかったら時間を無駄にして離れていくし。

「連絡の仕方、手順・物事の進め方、誰とどのタイミングで合意をしておかないと上手くいかないか。たとえば、会場はいつのタイミングで借りるか?どのタイミングで発信するか?イベントの設計ってめちゃくちゃビジネスの肝、規格みたいなもんなんですよ。だからそれを一緒にやって、そこから起業に興味持つ人とかもいると思うんですよ。そういうの一緒にやれたらいいなって。」

ビジネスのおもしろいところも、大事なところも入っているのがイベントの企画なんですね。

「うん、入ってると思う。イヤなところも含めてね。すげえ変な客来るとか、すげえいちゃもんつけられるとか、そういうのもリアルだなって思う。」

「酸いも甘いも。

「そうだね。だから起業したいって人は、一回イベント設計をやってみるっていうのはまじでおすすめ。」

「たしかに、自分の中でのビジネスのおもしろさのディテールを高めることにも繋がりそうで、とても楽しそうですね……!」

まとめ

・Setouchi Startupsでは、瀬戸内というエリアに的を絞ることで、独自の立ち位置からスタートアップ企業の支援を行っている。
・起業やスタートアップに興味を持つ学生が集まるイベントを、高校生と一緒に作りたい!!

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この記事は、JST「EDGE-PRIME Initiative」 事業の一環として、岡山大学がNPO法人だっぴ、無花果株式会社と協力し、運営している高校生向けアントレプレナーコミュニティ 「オレンジ」が作成しました。

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