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「アパレル製造の現場目線で改革をサポートしたい。」patternstorage株式会社代表取締役 今井恵子インタビュー


はじめに

この記事は、

・現役高校生のわたし、橙香が
・インターンを募集している
・瀬戸内エリアで活躍する起業家、経営者にインタビューを行ったもの

となっています。今回のインタビューは、アパレル生産管理システム「patternstorage」を運営するpatternstorage株式会社の代表取締役、今井恵子さんにお話を伺ってきました。

name:橙香(とうか)
現役高校生。 この記事でインタビューをする人。

neme:今井恵子さん(いまい けいこ)
patternstorage株式会社の代表取締役。 この記事でインタビューされる人。

patternstorageについて

「本日はよろしくお願いいたします。」

「はい、よろしくお願いします!」

「早速ですが、今井さんが何をされていらっしゃるのか、聞かせてもらっても良いでしょうか?」

「はい、もちろんです。元々私はものづくりが好きで、服作りを支える仕事の面白さからパタンナーをしていました。その後、アパレル産業に貢献したいという思いから起業を決意し、『patternstorage』というアパレルの製造業に特化したサービスを提供する会社を設立しました。」
「私たちが達成したいと考えるミッションは『持続可能な未来のアパレル産業を作る』というものです。アパレルって、コレクションに出ているハイブランドのような、ファッションが好きな一部の人だけがお金を出している産業のようなイメージがあるかもしれないですが、もちろんそれだけじゃないですよね。人間って、みんなが服を着てるじゃないですか。」

「確かに、ファッションに興味が無くても、みんな服を着てはいますね。」

「そうなんです。だから、服を作る上で地球環境に負担がかかってしまっているという現状も、一部の人にだけ関係があるわけじゃなく、服を着て生きている以上、すべての人に関係があると私は考えています。なので、勿論今すぐには難しいのですが、できる限り環境への負担を減らし、アパレル産業をより持続可能な産業に変えていきたいと考えているんです。」
「では、誰に向けてどんなことをしているのかというと、アパレルのサプライチェーンは川上・川中・川下の大きく三つに分けられます。川上の方は材料を作っていて、川中は商品を、川下はそれを販売する店舗や顧客への窓口みたいな形になっています。現在私たちが提供しているサービスは二つあるのですが、その内の一つが川上である間接材商社(専門商社)の方々に特化したものです。間接材を取り扱っているところなので、あまり消費者の目には触れないことが多いですね。」

お借りした資料

「また、もう一つの事業はコンサルティングです。事業を始めてもう5年くらい経つんですが、過去には企業さんからお声がけいただいても、自社が提供できるものとお声がけいただいた方の求めているものが違っていて、何も提供できなかったということもありました。なので、まずはプロダクトありきの話ではなく、”困っていることに寄り添いますよ”と始めたのが、このコンサルティングサービスです。」

「なるほど!一部に特化したサービスと、そことは少し需要の違う方々に寄り添うサービスをやってらっしゃるんですね。」

属人化した業務に改革を

「ではまず一つ目のサービスから、詳しく説明いただいてもよろしいでしょうか?」

「わかりました!ではまず、この資料を見てください。映っている人たちは何に困っていそうでしょうか?」

お借りした資料

”多品種小ロット・人手不足・システム入れ替え”って書いてありますね。」

「そうなんです。昔は少品種・大量生産が主流だったんですが、時代の流れとともに、現在は多品種・小ロットが多くなっています。今でも大手企業では何万着という単位で生産していますが、例えば有名なインフルエンサーがプロデュースするブランドが増えている今、10年前ではそもそも生産を受け入れてもらえなかった100着以下の生産も当たり前になっています。仮に1,000着作る場合、1型より10型で1,000着の方が大変なのはわかると思います。準備の手間が10倍以上かかる上に、材料が使い切れず余ってしまうこともあります。」
とはいえ小ロットが今の世の中のニーズなので、生産側で工夫してその需要に対応する必要があると考えています。ただ、今まで少品種・大量生産をしてきたアパレル製造業の現場の方々が、業務と並行してITを駆使して多品種・小ロットに対応するのは簡単な事ではないと考えています。

「時代に合わせて対応しないといけないけど、今までよりもコストや手間がかかるから大変なんですね。」

「そうなんです。さらに、アパレル産業でやり取りされる帳票は会社ごとに形式が違ってて、紙で送られてくるケースが大半で、そもそものデータ入力に人の手が多くかかります。それだけでもかなり大変ですが、間接材商社の年間の取引先は約2,000社。そして送られてくる帳票の数は、500万件にも上ります。」

「とんでもない数ですね……しかも帳票の形式が会社ごとに違うってめちゃくちゃ大変じゃないですか。」

「そうなんです。多品種化によって今までよりはるかに大量のデータ入力が必要になっています。しかも生地やボタンの品番コードは、同じものでも会社さんによって違う場合が多くあります。1000番の素材が必要と書類に書いてあっても、「A社さんからだとTEF-1000-15の裏地のこと、B社からだと品番が変わって3000番のボタンのこと」というように。多くの場合、このデータの変換についてはデジタル管理されておらず、会社ごとに特定の受注担当者さんが目で見て経験で読み替えの対応をしています。」
「そうした読み替えの知識はその人のものだけになっていって、「このブランドはこの人しか処理が出来ない」状態になり、個人に負荷がかかります。こういった状況を少しでも改善し、アパレル製造業の皆さんの業務を少しでも楽にしながら、一緒に持続可能な未来を作っていきたいと思い、事業をやっています!」

「おお~!かっこいい!」

「ありがとうございます!笑 ここからがサービスの内容なんですが、会計システムを例に説明します。会計システムだと、毎月の取り引きを学習して、翌月また同じ処理をする時に「これは交通費」と入力をサポートしてくれますよね。私たちはこれのアパレル製造版と思ってもらえるとわかりやすいかなと。」
「まずは、各社から受け取る様々な書類を丸ごと取り込みます。次に、書いてある情報をデジタルで読み出して、さらに各社ごとのコードの癖を読み替え、自社の基幹システムに流し込み受注の処理を高速化してくれます。」

「それは仕事の効率がものすごく上がるうえに、新人の教育コストを抑えることもできそうですね。」

会社の状態にあわせたサポートを

「では二つ目のサービスの内容を説明してもらってもいいでしょうか?」

「私たちのところに寄せられる困り事は、実は似たものが多いんです。管理職の方は「何かいいシステムはないかな?」、現場の方は「もう入力業務多すぎ」こんな声を沢山頂いています。先程の話にも通じますが、アパレルでは会社を跨ぐたびにデータが紙などのアナログな情報になってしまうため、システム上で一貫して管理する事が難しく、トレーサビリティの実現に向けて大きなハードルになっています。他の産業と比較すると、法律や認証の関係が整ってないんじゃないかと感じています。」
「現場の皆さんも、もちろんそういった流れを無関係とは思っていません。ただ、実施には多くのお金が必要ですし、それによってすぐに利益が増えるわけでもない。企業としてはそこに投資はしにくいんですよね。衣類の単価はどんどん安くなっていて、下請け構造上多くの会社が大変な状況にあるのではないでしょうか。自動車業界などでは一般的な仕組みが、有名なメーカーから町工場まで、アパレル産業でトレーサビリティを実現できている企業はほとんど存在していないのではないかと思います。」
「最初に話したプロダクトはその解決策になると考えています。ただ、困っている企業様の緊急度の高い課題を解決する時には、システムで対応出来てない部分の課題を解決していく必要がある。私たちが提供しているコンサルティングサービスでは「この会社さんの業務効率を達成するにはまずどこを改善していくのが重要か」ということを、同じ目線に立って推進しています。」

インタビュー中の今井さん

”会社の状態にあわせたサポートを”ってことですか。」

「まさにそうですね!私たちのサービスもあくまで選択肢の一つで、より良いものがあればそちらを選んでもらってもいいと思っています。会計システムが古くてネットにつながっていないのであれば、「freee会計に変えて会計連動を目指しましょう!」といった提案をしたり、補助金を確保するための申請も一緒にサポートしたりしています。」
「例えば、ある予約システムがあるとします。現実世界で5人が待っていたら、データの中でも5人待ちという状態が表示されるようになっている。このように、現実世界とデジタルの世界の状態が合っているのがアパレル製造業のあるべき姿だと思っています。現実での行動がすぐにデジタルに反映されたら、トレーサビリティの実現も可能だと考えています。」

「確かに!データで製品の動向が判ればトレーサビリティ出来そうですね!」

「そうなんです!けど実際は全然そうなってなくて。とあるお客様の話で、世界的なブランドから声がかかるほど素晴らしい技術をもっている会社さんです。ただ、管理はアナログで、担当者さんが歩いて確認、完成したら社長さんがエクセルにデータを打ち込んで、来月の生産はある程度勘でやっているというような状態です。もちろん、皆さんIoTを導入すれば効率化できそうとわかってはいるものの、それを現場に落とし込める人材は不足しています。」
「なので、それを代わりに私たちがやっています。」

「すごい……!現場の人もこうやれば良いって知っていても、詳しいやり方を知らなかったり、知識が無くて諦めているところを、今井さん達がサポートしてくれるというのはかなり心強いですね。」

今井さんの思い

「最初、服を作ることに地球への悪い影響があると仰っていましたが、そんなにも環境に悪いものなんでしょうか?」

「現状はそう思います。先進国で服が過剰に服が販売されてて、余った服は発展途上国に配られています。ただ、発展途上国ももうこれ以上の衣服は必要なく、服がゴミの山になっている状態です。そうした衣服は工業用の雑巾にすらなりません。処分するにも焼却しなくちゃいけない、という状況になっています。」

「服って年中新しいものが販売されますし、大量生産大量消費が今現在も起こっているんですね。」

「信じられないほど安値で服を売っているサイトもありますよね。その安さの背景には、生産者への最低賃金での支払いや児童に労働させないといった基本的な人権が守られていない可能性も大いにあると思います。」

「確かに異様なほど値段の安いショッピングサイトありますね……そんなことが起こっていたなんて知らなかったです。」

「でもこの問題、実は途上国にだけあることじゃないんです。例えば日本の各産地では、多重下請け構造で町全体が一つの工場みたいになっているところが多いと思います。内職さんなどの下請けでは、熟練の技術であっても時給数百円などになってしまうケースもあると聞いています。」

インタビュー中の今井さん

「私たちが見えてないだけで沢山の問題があるんですね……。」

「誰もがおかしいと思ってる、けどなかなか変えられないという事がアパレル産業の中でまだまだあると思います。最初に話したように、私は元々パタンナーとして働いていたので、現場の想いを誰よりも分かると思っています。もちろん、悲しいこともたくさんありましたが、服作りの工程は何より大好きだし、だからこそ「現場で頑張っている方を何とか応援したい」という思いを強く持っています。それが、今の私の根源です!」

高校生と働くとしたら?

「最後に、もしpatternstorageさんに高校生がインターンに来たら、”こんなことをやりたいな”というのはありますか?」

「気持ちとしては是非何でも!という感じですが、お客様のところに行ってもシステムの話ばかりしてますね。そうだな、「私と高校生の子でファッションについての話し合いをする」というのはやってみたいですね。この記事のように、高校生の子が私の話を聞いて、聞く前と後で考え方がどう変わったかをpatternstorageでも記事にするのも良いかもしれません!今の高校生の子が、どんな気持ちで服を買ってるのかは気になりますね!」

「良いですね!高校生も今井さんの話を聞いて知れることがあると思うし、今井さんも高校生の考え方や価値観を知れて、お互いに色々と学べそうですね!」

「本日は貴重なお話をありがとうございました。」

「こちらこそ、ありがとうございました!」

本日のまとめ

・patternstorageは、「持続可能な未来のアパレル産業を作ること」をミッションとしている。
・間接材商社向けにアナログのデータをデジタルに変換し業務を効率化するサービスと、アパレル業界の会社に寄り添いサポートするコンサルティングサービスを展開している。
・アパレル業界がより良いものになるように、働く人たちがより楽しく働けるような業界を作るために努力している。

「この記事を読んで、patternstorage株式会社でインターンがしてみたい!と感じていただけた方には、こちらの公式Instagramアカウントへメッセージを送れば、簡単にインターンに関する相談ができちゃいます!

「今井さんとのお話や、アパレルに興味のある方はぜひ!お気軽にご相談ください!」

patternstorage株式会社さんの活動に興味が湧いた!というそこのあなたに!
公式Webサイトはこちらから!!!

「こちらのマガジンから、これまでに取材した方々の記事を読むことも!」

この記事は、JST「EDGE-PRIME Initiative」 事業の一環として、岡山大学がNPO法人だっぴ、無花果株式会社と協力し、運営している高校生向けアントレプレナーコミュニティ 「オレンジ」が作成しました。

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