挿画『おくりびとは名探偵 元祖まごころ葬儀社事件ファイル』-メイキング
『おくりびとは名探偵 元祖まごころ葬儀社事件ファイル』
著:天野 頌子 氏
刊:光文社
発売日:2019/12/10
ISBN-10: 4334779514
ISBN-13: 978-4334779511
デザイン: bookwall
↑試し読みもできる特集ページです!
装画&挿画を担当いたしました。
ここではモノクロ挿画についてご紹介します
装画についてはこちら
テレビドラマ化もされたロングセラー「陰陽屋シリーズ」の著者が贈る、笑って泣けるハートフル・ミステリー!
渋井和馬は売れないミステリー作家。実家の葬儀社のアルバイトで食いつなぐ日々だ。
そんなある日、葬儀場のトイレで「お母さんを殺してしまった」という何者かの独り言を聞いてしまう。
「こんな美味しい事件を見過ごすなんて、ミステリー作家としてありえないでしょう!だって本物の殺人事件が目の前にころがってるんですよ!?」
不謹慎すぎる本音を胸に、和馬は涙もろい僧侶の梅澤翠芳とともに真相解明に乗り出してゆく…
1:ご依頼・打ち合わせ(約2週間)
・葬儀社を舞台にしたユーモアミステリー
・多彩な登場人物が登場して賑やかに展開し、
最後にはホロリとさせられる温かい読後感を残す作品
・装画、本文の挿絵3点、登場人物紹介イラストを制作
・納期は1ヶ月半ほど
光文社さんにはいつもお世話になっていますが、案件ごとに担当編集さんは違うので毎回「はじめまして」から。
実は最初にお声がけいただいたときは装画のみの予定だったのが「可能なら挿絵も」となり、「この予算と納期で何をどれだけ描くか?描けるか?」とひとつひとつ確認とご相談をしました。
全身図かバストアップか、キャラがひとり増えるか減るかでも作画コストはまったく違いますしね!
・メインキャラ3人(元祖まごころ葬儀社)は全身図
・ゲストキャラ4人(故人とその三人の息子)はバストアップ
・挿絵は序盤、中盤、終盤で指定されたシーンを1点ずつ
2:メインキャラ-ラフスケッチ(ご依頼から10日〜ほど)
渋井和馬(中央)
売れないミステリー作家。実家の「元祖まごころ葬儀社」アルバイト。
ひょろい長身の三十代。安物の黒スーツにとぼけた丸フレーム眼鏡、後頭部には寝癖。
冴えないアラサー感を出したいな〜と思いこうなりました。
梅澤翠芳(左)
宝雪寺の住職。和馬の高校の先輩でもあり、ミステリー研究会元会長。
読経中に涙をこぼしてしまうほど涙もろい。
地元でも評判の美僧。「うなじが美しい」とのこと。
著者さんとしてはキラキラゴージャスな袈裟のイメージらしい…?
宮尾くるみ(右)
最年少社員。死に化粧の達人で、鋭いカンの持ち主。
就活中の女子大生のような童顔で、黒のパンツスーツにパンプス+黒髪ウィッグという出で立ち。
言動に容赦がないので、どことなく小悪魔っぽいかんじにも見えるよう意識しました。
こういう案件だと制作に入る前の資料探しのほうが時間がかかります。
特に袈裟なんて資料なしに描けるわけがないので、図書館で司書さんにいろいろ探してもらいました。大きな図書館ほんとありがたい…
「美しいと評判になるくらいだからうなじが出るタイプの袈裟なんだろうな」「襟巻つきのがゴージャスに見える気がするんだけど」「モノクロでもキンキラに見えるにはどうすれば」「やりすぎるとそもそも袈裟に見えないのでは」等、悩む悩む…
3:フィードバック(約2日)
和馬について
もう少しくたびれていない人物に。
よく言えばキュートで前向き、悪く言えば子供っぽく軽はずみな感じの表情にしていただけると嬉しいです。
何せ一度もちゃんと就職したことないし、実家暮らしで実家バイトだし、大学生がそのまま年をとりましたみたいな人ですから…
翠芳について
切れ長の目でやや怜悧な美貌に見えるので
もう少し優し気な表情(涙もろくて大きな目に涙をためる描写がありましたよね)にしていただければと思います。
くるみちゃんはバッチリです!
作中で「冴えないかんじ」に描写されていたらイラストにも冴えない感を出したがるタチなのですが、だいたい修正指示が入ります…^^
イラストではお客さんの目に留まるような魅力をたたえていなければならないのだ。わかるわかる。
わかるけど私はいわゆる地味顔や強面、非美形キャラも好きなので「もっと明るくかわいく!」と言われるとスイッチの切り替えに苦心することが多々あります。
(くるみさんは描くのも楽しかったし一発OKで嬉しかった)
4:メインキャラ-修正ラフ(約1日)
・和馬の表情を明るくひょうきんに、髪型やポーズも軽やかに
・翠芳をカメラ目線に、顔立ちもやわらかく
和馬はいろいろと難はあるけど憎めないキャラというやつだよな〜と思ったので、顔立ちは変えず顔つきを変えることで愛嬌を出したい!と、こうなりました。今回はうまく切り替えできたと自画自賛。
翠芳は「瞳が大きい」設定だけを反映すると女性っぽくなってしまいそうなので、眉を少し太めにしてそこはかとない凛々しさを出したつもり。
これでOKが出たので次はゲストキャラのラフへ。
5:ゲストキャラ-ラフスケッチ(ご依頼から2週間〜ほど)
故人:ドケチで有名だった街いちばんの実業家(享年67歳)
外見の描写が特になかったので自分の中の「厳しそうな女傑」のイメージをひっぱり出しました。
故人の長男(右):不動産会社社長
名ばかりの後継者でグループの実権は渡してもらえずじまい。
死体の第一発見者は彼の妻(故人と険悪な仲)だった。
頭髪は半分以上白髪の、老け込んだ40代。気弱。
次男(中央):病院長
病院は大赤字で、のどから手が出るほど遺産が欲しかった。
故人の死亡診断書も書いたのだが……?
ぽっちゃり体型の30〜40代。
三男(左):レストラン支配人
任されたレストランは経営不振が続き、すぐにでも解任されそうな状況。
長めの髪に顎髭の30代そこそこ。情緒豊か。
6:フィードバック(約2日)
故人に関して初期稿から加筆アリ
・リサイクルショップで買ったブランドもののスーツを着ている
・一応笑顔だが目力がありすぎて怖い
「ごうつくばばあ」感が欲しい
次男と三男、特に次男のぽっちゃり感がイメージ通り。
長男はもうちょっと細面のハンサムで上品でおっとりした感じのおじさまに
していただけると嬉しいです。
7:ゲストキャラ-修正ラフ(約5日)
目力マシマシ。具体的なディレクションをいろいろとしてくださったので「あ〜なるほどな〜」と思いながら軌道修正しました。
長男はリテイクを重ねました。
「ちょっと貫禄がありすぎるのでごく普通の真面目で少しおとなしそうなマイホーム・パパ的なイメージに寄せて」…
もしかして髪型がネックなのかな?と最終的にこうなりました。
「老けてる」設定があるなら老けさせたいという思いからなかなか抜け出せなかったもよう。最近のおじさんはみんな若いので難しいですね…
メインキャラでも感じましたが、「まずは自由に」と言われたら地味めに描いてしまう傾向があるのかも…?
作品やレーベルとの相性もあるとは思いますが。
(とある作品ではリテイクの嵐だった初期ラフを、別の出版社の編集さんにお見せすると「最初の方がずっとイイ!」と言われることもあります)
8:登場人物-完成(ご依頼から1ヶ月ほど)
ちなみに、各キャラクターはレイアウトの際に調整がきくようにそれぞれ単体で制作しています。いや〜モノクロめっちゃ難しい。
(長男は最終ラフで白髪設定が消失してたのをあとからもう一度修正)
これをデザイナーさんにレイアウトしていただくとこうなります!
メインキャラのほうには装画の背景が使われています〜
データを納品した時点ではこういう活用をされると思ってなかったので驚きましたが、なんだかかわいく見えて嬉しい。
ゲストキャラのほうも、お葬式でよくある白黒ストライプの幕(鯨幕というらしい)がポップな印象で不思議。
9:本文挿絵(3点)
装画や人物紹介イラストと並行して、こちらも作業をしていました。
今回は何にどれだけ時間がかかったのだか記憶が曖昧です。
しかしこのnoteも随分長くなりましたし、挿画をひとつずつ解説していたら本編ネタバレになるかもしれないので
こちらはぜひ実際に本をお手にとってご確認くださいませ!
キャッチコピーは
「笑って泣けるハートフル・ミステリー!」
特設ページはこちら(本文立ち読みや登場人物紹介も)
よろしくお願いします!