【企画参加】しゃべるピアノ【ショートショートnote杯】
悪いことは、いつも重なって起こる。
最終面接まで漕ぎ着けた会社は見送りになり、バイトは経営破綻でクビになり、今しがた付き合っていた彼氏からも、別れを告げるメールが届いた。
悲しい、とか悔しい、という感情はとうの昔に消え去り、無の感情を抱えたまま、秒針が鳴り響く薄暗い部屋で静かに息をしていた。
もう、死んじゃおうかな。
そんなことまで脳裏に浮かぶ。
「まだ、辞めないでよ」
部屋のどこからか、久しぶりに聞く声がする。
「せめて、僕を弾いてから終わりにしようよ」
声の主は、部屋の隅にある埃をかぶったピアノだった。
私が幼い頃に、両親が買ってくれたピアノ。
このピアノは、いつだって私に語りかけてくれた。
歳を重ねるにつれピアノに触れる回数が減ってしまったため、どんどん埃をかぶり、いつしか口を開かなくなっていた。
最後に1回ぐらい、弾いておくか。
記録としてLIVE配信アプリを開いて配信を開始し、指が運ぶままにしゃべるピアノを奏でた。
❆ ❆ ❆
今回は、「ショートショートnote杯」という企画に参加させていただきました!!
普段1000文字超え、平均2000〜3000文字を書くわたしからすると、410文字という文字数がかなりネックになりました😂
少ない文字数で物語を作るのは難しかったですが、とても楽しかったです!!!
そして、このお話は「悪いことが続いた後には、いいことが絶対に訪れる」というメッセージも込めて書きました。
LIVE配信アプリでピアノ演奏を披露することで、彼女の人生がいい方向に転んでほしいな…なんて願いを込めて。
演奏家なんかになれちゃったら、それはもう大逆転ですよね✨✨
しゃべるピアノの声は、彼女にしか届きません。
だから、2人で行けるところまで、どこまでも行ってほしいです…!
この度は素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました💫
※アイキャッチ画像に素敵なお写真をお借りしています。