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第6話 散歩
散歩をするようになった。
2時間ほど、歩く。ラジオや音楽。波や鳥の声、草木のざわめきを聴きながら、歩く。川岸や海岸沿い、松林の中を、歩く。散歩はいい。
ある時、ふと、「百歩目」がどこか、確かめたくなった。あの草の所、かな?歩き出す。1、2…113歩目だった。いい線じゃないの?
「百歩目」が散歩のメニューに加わった。
いつも一人で歩く。自分のペースで歩けるから。「百歩目」案外、楽しい。
けど、ある日。
妻が一緒に歩こう、と言ってきた。断る勇気はないから、そうだね、歩こう。しばらくは、世間話をしながら歩いていたが、沈黙が訪れた(そうになった)
「百歩目」の話をしてみた。
妻は、私もやってみよう、と言うと、
あの看板のあたりかな、チラッとこちらを見て、歩き出した。長いな、100は超える。「88、89!」えっ、短かったの?意識しすぎたか。「百歩目」あるあるだ。そういえば「チヨコレイト」のように歩いてたな。
散歩は、一人がいい、のだけど。
家族で散歩なんていつ以来だろ。妻が「百歩目」の話をしたらしい。やってみたい、って。もちろん、じゃあ行こうか。玄関前に集合!
で、当然、待つ。
お、そうだ、
「鈴、お前の百歩目はどこだ?」
鈴は聞いていたようだったが返事はない。靴紐を結んでいた息子が「どの足で数えるの、だってさ」「ワン」相槌のように鈴が吠えた。
凛を連れてきた。
「凛、お前は?」聞いてもいない。
「ご飯、ちょーだい、だってさ」妻が遠くで答える。
「ニャー」正解か?凛が鳴く。
ようやく揃ったので、出発だ。
「百歩目かあ、どこだろ?」早速息子が挑んでいる。「お母さんは、あの電柱かな?」妻も楽しそう。
あ、そうそう、
未来のためにできること?
それは「こんな未来」「あんな未来」を想定しないことかな。
「そんな未来」なんてズレズレに決まっている。
ひとりぼっちは苦手だ。
みんな「今」を生きてる。
時間は流れるけど、「明日」には辿り着けない。
「明日」という言葉があるだけだ。
だから、一緒に一歩目から歩き出していくしかない。
せーの、「1」「ワン」
ズレを直して、「2」「ニャー」
みんないます。
明日は、未来は、今の積み重ねだ。
「3」「4」
歩き出すこと、声を出すこと、直すこと、お互いを確認すること。
できることは、このくらいだ。
「5」
凛が逃げた〜
外に連れ出すから
あ、声するよ
凛、どこ?
ワン
おっ、想定外の「今」がきたが、
ニャー
凜はいた。
「6からだよ」
「了解」
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