【韓国論文】韓国語教材に載っていない敬語表現
1.正しく敬語を使えている?
韓国語は、年齢による上下関係が敬語を使う基準になります。
もちろん、日本語も年上の人に敬語を使う習慣はありますが、韓国語の敬語のルールは日本語の敬語ルールと違うため感覚的に理解することが難しく、韓国語学習者にとって難関といえるでしょう。
今回は、教材の説明不足が韓国語学習者が敬語を正しく使いこなせない原因になっている可能性を指摘した論文を共有します。
共有する論文:オ・グァングン「韓国語教材の敬語法対話文提示の問題とその解決方案」
2.하셔と하셔요の存在
この論文は、韓国語教材が提示する尊敬語の例文の提示方法にどんな学習要素が見過ごされているのかを明らかにしようとしています。
また、その学習要素に対した解決策も合わせて見つけ出すところにこの論文の目的があります。
韓国語教材で해요体を教える時の重要な部分は、해요体が聞き手を上げる話し方なので、聞き手のことを考えなければならないのはもちろん、この話で行為の主体が誰なのかを必ず考えなければならない点です。
そのため、話し手と聞き手の上下関係が曖昧な関係のままで会話文を設定することは해요体を学習者に理解させるのに不十分だという結論になります。
また、해요体を使うべき状況で述語の主体が、話し手の自分なのか聞き手なのかを区別して使わないといけないことをはっきりと教えないと学習者が混乱しながら使ってしまう可能性が考えられます。
論文の筆者は、韓国語教材で셔形が登場しない点を重要な特性として挙げました。
셔形は、시と어がくっついた形態です。
論文の筆者は、셔形が해体教育で充分に扱える内容だとしています。
해体は、聞き手を上げるような表現ではありません。
したがって上下関係が無い対等な関係で使う表現であるが、この場合において、尊敬表現の시が会話で登場する場合があります。
つまり、話し手と聞き手は対等な関係であるが、その会話の中に登場する第三者が上の立場であり、その人が行為の主体になる場合です。
この会話文で起こりうる敬語の間違いは以下の2通りです。
多くの学習者は해요体を学ぶ過程で、話し手はその行為の主体が誰なのかによって、-시が必要であることを学びます。
このことは해体においても同様で、聞き手との上下関係が決まっていても、その行為の主体に対して-시の尊敬表現が必要なのかを考え続けなくてはいけません。
もうひとつ、敬語の会話文に置いて注目するべきポイントは-세요体の存在です。
多くの学習者は、해体に丁寧な表現にする‘요’をくっつけて해요体になると覚えています。
もしそうだとしたら、해요体と해体が同時に出てくる会話環境でこの「해体に丁寧な表現にする‘요’をくっつけて해요体になる」ということを体系的に学習者へ見せることができるようにしなければなりません。
しかし、すでに세요体を習っている場合、例文からこの体系を確認できません。
論文の筆者は、このような体系的な規則を提示できていないことによって、学習者は셔を使いこなせないでいるのではないかと推測しました。
このような問題意識から論文は、次の通りの結論を提示しました。
3.初級で唐突に登場する-세요表現
相手に依頼や命令する表現としてよく登場する-세요の文法ですが、まずは平常文の敬語表現として使います。
この세요を「日本語の‘してください’と一致する」と、覚えると混乱すると思います。
私も最初に세요を聞いた時に、論文で指摘されているとおり、세が何なのかよく分からなくて困惑してました。
後になって、하시다から하세요に活用されていると知って、少し整理できるようになりました。
たしかに日常会話で韓国人は、하셔요よりは하세요を使っていると思います。
私はその理由をあまり知りませんが、初級でわざわざ使われていない表現を教えると学習者が混乱するので、教材で省略することには賛成です。
しかし세요だけを覚えると、過去の하셨다や仮定の하시면などの活用形をバラバラに覚えることになるし、日本語ネイティブにありがちな하세요と해주세요の違いに混乱することも学習者として実感してます。
だから、初級段階ではたしかに大変かもしれないけれど、初めの段階で시の品詞と活用形の説明がもっと必要だと思います。
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論文
オ・グァングン「韓国語教材の敬語法対話文提示の問題とその解決方案」『新しい国語教育』94巻、韓国国語教育学会、2013年、pp.341-360
오광근「한국어 교재의 경어법 대화문 제시의 문제와 그 해결 방안」『새국어교육』no.94, 한국국어교육학회, 2013년, pp.341 - 360
敬語法の問題については以下の記事も↓
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