
0817 真贋の花~『怪盗紳士の殺人』
0.はじめに
こちらの記事は以下の注意点がございます。
・Chat GPTから文言等の修正を受けながら執筆します。
・1995年から1997年まで放映されたドラマ版ですので、アニメの話はほとんど出ません。
この2点をご了承いただける方はどうぞ続きを読んでください。
1.総評
評価:★★★★★(星5)
このドラマシリーズの中で、最高傑作と呼ぶべき作品です。
ミステリーパートやキャラクターの演出もレベルが十分高いのですが、一番高いのはスタッフの熱意であるように感じた一作です。
この話だけはビデオ等を購入する価値があるように感じました。
2.具体的な見どころ
1.解けないのに、見終わったら納得のいく完璧なミステリー
今回の話も、「タロット山荘」と同様にキャストの言動や風景の中に答えが隠されている描写が多々見られました。ただ、それらのヒントを集めて真実にたどり着くには、頭の柔らかさが求められる出来となっています。ネタバレにならない範囲で言うと、「言動に矛盾する状況に真実へのヒントが隠されている」という点です。
例えば、剣持警部は怪盗紳士を「気に入った芸術品を盗んだ後、そのモチーフになったものも一緒に連れ去る泥棒」と称しています。実際、冒頭で白イルカの絵が盗まれ、そのモチーフになった白イルカ2匹も囮戦法で誰にも見つかることなく連れ去られています。しかし、怪盗紳士がその日のうちに次の絵を盗んだ際には、絵のモチーフである社長を晒しもののように殺害しています。本来の怪盗紳士ならば、誰にも見つからず社長を連れ去るのが自然なはずです。この矛盾に気付くことが、真実へのカギとなるのです。
ところが、そう考えにくい仕組みが存在するのがクセ者なのです。なぜなら、ドラマオリジナル設定でその場に鉢合わせた真壁誠が「モデルの命を盗んだ」と発言したからです。これによって、当初の怪盗紳士が「攫えないなら命を盗む」筋が通らなくもない人物に変わってしまったのです。
このように、「矛盾した状況に対していかにも正当らしい理由を付ける」ため、矛盾を見つけ出すことが難しく、それがミステリーパートの難易度をグッと上げていました。見ごたえ抜群です。
2.個性的なキャラクターの出し方
今回はキャストの使い方も鮮やかでした。特筆すべきは美雪の活躍です。今回の美雪は「相棒」であり「ヒロイン」ではありません。
美雪は今回家族と沖縄旅行に向かっており、凄惨な殺人事件の起きた山荘にはいない設定です。原作やアニメでははじめと一緒に参加している設定ですが、このドラマオリジナルの設定が重要な役割を果たしています。彼女が沖縄にいることが事件解決のカギとなるからです。詳細はネタバレになるため伏せますが、原作やアニメにない展開を楽しませていただきました。
3.原作を超えた事件の結末
この話はスタッフの熱意や愛情が最もこもっていた作品です。その具体的な理由は、被害者の殺害動機につながるため伏せますが、こういう仕事をする人間ならば誰でも犯人に肩入れせざるを得ない内容です。
だからこそ、原作とドラマで犯人の亡くなる場所が違うのです。原作では犯人は全員が集められた場所で自らにナイフを突き刺してすぐに亡くなりますが、ドラマでは全く別の場所に運ばれて亡くなります。スタッフは、諸悪の根源と犯人の死に場所を対称的にしたかったのではないかと感じました。
「あなたは一人じゃないから、安心してね。」
犯人がそんな風に言われているような気分になり、エンディングに入った時、私はそこでようやく自分が涙を流していることに気付きました。
3.おわりに
本作は初代ドラマの中で最も出来が良く、参加したキャスト全員の熱意や愛情がひしひしと伝わる作品です。このドラマで涙を流した事件はこれ以外にありません。(剛さん以外の作品だとありますが)
『金田一少年の事件簿』のドラマの中で頂点と呼べる作品です。皆さんもこの感動を共有できることを心の底から祈りつつ、今回の話を締めくくります。
4.次回予告
次の投稿予定は「8月31日」です。次の作品……ここから失速し始める感が否めないので、気が乗りません。放物線の頂点に達すると下へ落ちていくように、堂本版にはそういう短所があります。
5.最後まで読んでくださった方へ
こちらは堂本版と無関係のおまけ話になります。
本編をご覧になった後に、山田版金田一の第1話『銀幕の殺人鬼』をご視聴いただくことをお勧めします。正直なところ、次の堂本版作品を見るよりも、このエピソードを観るほうが感動するかもしれません。なぜこの作品をお勧めするかというと、今回のドラマに登場するある設定が『銀幕の殺人鬼』に反映されており、それが事件を解くための重要なヒントになっているからです。金田一らしい本格的で難解なトリックも見どころのひとつですので、ぜひお楽しみください。
いいなと思ったら応援しよう!
