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時代は農ミュニケーション!? 茨大生が行く!地域インターンシップ#1

 どうもこんにちは。「地域に飛び込め!」をモットーに茨城と(たまに)福島を駆け回る茨大生、いちらきです。今回は、夏から温めていた企画をついに先日行動に移すことができたので、そのことについて書いていきたいと思います。(※関係者の方に活動についてSNSに投稿してもよいか確認の上記事にしています)

 今回の企画は、「地域インターンシップ」というもの。お世話になっている先生との会話の中で生まれたアイディアをもとに、私がメインで企画をしています。

 「地域インターンシップ」の活動内容としては、「イベントや何かのお手伝いなどを通して学生と地域の方々との交流を深め、学生自らその地域の課題を見つけ、アクションを起こす」というものを想定しています。授業のようにプログラムにとらわれず、その地域について知ろうとするところから始め、地域との継続的な関わりを大切にする点がポイントです。

 もともとは水戸市飯富町というところをフィールドにする予定でしたが、いろいろあって飯富のOさんのご紹介で那珂市の農家さんにお世話になることに。

 さて、今回の活動の場となる那珂市とはどのようなところかご存じでしょうか。那珂市といえば?白鳥?ひまわり?那珂かぼちゃ?
 那珂市は、水戸市やひたちなか市のベッドタウン的側面とのどかな農村的側面を併せ持つ、人口5万人ちょっとの市です。場所的には、水戸市の北側に接しています。お隣のひたちなか市に知名度は押されがちですが、干し芋も名産です。木内酒造も有名ですね。

 那珂市の紹介が済んだところで、活動報告に入りたいと思います。今回は、農学部の知人も参加してくれました。スタートは芳野ふれあいファーム。隣に白鳥の飛来する池があるというなんとも魅力的な立地の直売所です。

白鳥の家族を発見!真ん中の子はまだちょっとグレーっぽい。

 まずは、こちらで行われる「いぃ那珂マルシェ」にお邪魔しました。毎月最終土曜日に行われている、地元の農業者団体「フェルミエ那珂」さんが主催する農産物直売イベントです。水戸駅改札前でも最近頻繁に開催しているので、見かけたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。市とも連携していて、市職員の方もいらしていました。

新鮮なお野菜が並びます

 最初にお手伝いさせていただいたのは、販売する野菜の詰め合わせBOXの箱詰めです。コロナでこうした対面販売が難しかった時期に、地域おこし協力隊の方が「ドライブスルーで野菜の詰め合わせを販売してはどうか」と提案したことから販売が始まったそうです。当初に比べれば購入する方は減りましたが、今でも20名ほどのコアなファンがいらっしゃるそうです。

 そんなこんなしていると、こんな会話が聞こえてきました。

「かぼちゃいくらで売るの?」
「ちっちゃいのはいくらだっけ?」

 …野菜の値段を今ここで決めている!?尋ねてみれば、露地栽培の場合はスーパーより少し安いくらいを目安に値段をその場で決めることもあるとのこと。一方、有機栽培や水耕栽培などの場合は栽培に多大なコストがかかっているのでしっかり計算をして決めるそうです。なるほど…初めて知った…

 さて、こちらのマルシェですが、地元の高校とも連携して開催されています。水農こと水戸農業高校さんが出店されていました。予定が合えば毎回出店することにしているそうです。水農さんは、名前に「水戸」と付くものの、所在地は実は那珂市。今となっては県で唯一の「農業高校」です。

 そして、こちらのマルシェには私たちのような大学生や新規就農者が相談にやって来ることもあるそう。飲ミュニケーションならぬ農ミュニケーションだ…!生産者さんと実際に会える場だからこそですね。なるほど対面での販売にはこういった利点もあるのかと勉強になりました。

 準備が整ったところで、私は大学芋作りのお手伝いのため厨房へ。こちらの大学芋は、来てくれた人へのサービス。毎回こうして何かしらを作って配っているとのことでした。けんちん汁を作ったこともあるそう。つまみ食い歓迎ということで、ちゃっかり私もいただきました。出来立てほくほく、アツアツの大学芋のおいしさたるや!

たくさん作ったので、参加者のみなさんのお土産になりました。

 話が戻りますが、最初の方に「マルシェは水戸駅改札前でも開催している」ということを述べました。これについてですが、水戸駅改札前にはJRが毎月イベントを誘致しているそうです。だからいつも何かしらのお店やら何やらが来ているんですね。いぃ那珂マルシェにもよく声がかかるそうです。
 そして、それを見た周辺のまちで模倣の動きもあるそうです。それぞれのまちをのびのびとアピールする場になればよいですが、差別化だなんだとパイの奪い合いのようになってほしくはないなと個人的には思います。

 マルシェ自体の話ではなくなりますが、この場で聞いたちょっと心配な話が一つ。それは、「那珂二中、三中、瓜連中では生徒が少なく、部活も数が減っている」ということ。
 那珂市には、那珂一中、二中、三中、四中、瓜連中の5つの中学校があります。このうち、一中と四中はそこそこの生徒数を抱えているのですが、あと3つの中学校は生徒減に悩んでいると。
 自分が中学生の頃には「部活が減る」なんて想像したこともなかったので、身近でそれが起こっているということを知り、結構な衝撃を受けました。現在、生徒数や教員数の減少に伴い部活動の地域移行や指導者の養成が盛んに議論されていますが、那珂市も例外ではないようですね。

 なお、マルシェにいらしていた農家さんのお話によると、作った野菜などを給食用に出荷することもあるそうです。いつどれだけの量を納めればよいかはっきりしているのでやりやすいとのことでした。子どものころ何気なく食べていた給食も、こうした方々の存在があって成り立っていたんですね。

 そして、興味深かった話がもう一つ。那珂市の特産品、那珂かぼちゃについてです。那珂かぼちゃは、非常にデリケートで手間とコストがかかるため、作りたがる人はあまりいないそうです。出回る時期も非常に短いとのこと。確かに、私も那珂市民ですがなかなか那珂かぼちゃにお目にかかる機会はありません。「幻のかぼちゃ」みたいなイメージがありました。
 作りにくさを解消すべく、市は夏を越すタイプの「抑制かぼちゃ」も試験的に生産しているそうですが、今年は夏の暑さのせいでほぼ全滅だったそう…
 せっかく那珂かぼちゃというブランドがあるのだからもっと積極的にアピールすればいいのに、と簡単に考えていましたが、一筋縄ではいかないものなのだなと気付かされました。
 また、六次産業化の動きもあるそうですが、地元の農業団体ではペーストなどに加工する施設を建てるのが金銭的に難しいということでした。
 サツマイモの名産化、六次産業化を目指す福島県楢葉町では大手食品会社が参入しているため国内最大級のサツマイモ貯蔵庫があったりとハード面の整備が進んでいますが、また状況がかなり違うのだなということを知りました。
 お金の問題となってくると、行政との連携、参入企業の誘致という議論になってくるのでしょうか。トレンドとなっている六次産業化も、簡単にできるものではないようです。

 そうこうしているうちにマルシェも無事終了。お昼は、ふれあいファーム芳野の敷地内にある「ジェノヴァ」さんでご馳走になりました。そう、ふれあいファーム芳野はイタリアンレストランのある直売所でもあるのです!なかなか珍しいのではないでしょうか。こちらのオーナーさんも、マルシェなどを通してもともと地元の農家さんたちとの繋がりもありこちらに出店する運びとなったそうです。
 地元の野菜を積極的に使っているそうです。「バジルを確保したいんだけど、誰か作ってくれないかなぁ」とのこと。
 写真は撮り忘れてしまいましたが、私はおいしいジェノベーゼをいただきました!芳野にいらっしゃるときには是非立ち寄ってほしいお店です。

 さて、次に向かったのは、トマト農家のWさんのお宅です。こちらでは、農作業体験としてトマトの剪定の体験をさせていただきました。
 下から3本を目安に、実に葉がかかっている枝を切り落としていきます。間違って実がなっている枝を切ってしまわないよう注意が必要。冬は日射量が少なくなるので、剪定することでよく光が当たるようにするそうです。トマトの温度を上げて栄養価を高めることが目的だそう。なるほど…!

 やってみると、これが結構大変。といっても、作業自体がというよりかは、「これをビニールハウス全体分やったらかなり大変では!?」という感想。ごらんの通り、一列でもかなり奥行きというか距離があります。ハウスも一つではありません。

 普段はパートの方6,7人と作業をされているそうですが、もっと人手が欲しいという時期もあるそうです。

 さらに、生産にかかるコストについても驚くようなお話を伺いました。なんと、ビニールハウスは一棟4,000万円、維持設備も高価で、ハウス内の暖房も灯油を満タンにすると20万ほどかかるというのです。
 どのような部分にどれほどのコストがかかるのかという視点が今までの自分にはなかったので、衝撃でした。
 灯油の値上がりにも悩んでいるとのことでした。灯油の値段が上がっても、トマトが高く売れるというわけではないと。なるほど、設備の維持費の増大を商品にそのまま反映できないというのは辛い…

 私たちが普段食べているものにはたくさんの労力がかかっているということは、頭では分かっているつもりでも、こうしてその一端を体験するという機会は、なかなかないのではないでしょうか。食育という観点でも、今回の体験はとても貴重なものであったと思います。

 農の話からは少し逸れますが、Wさんとお話ししているとき、「菅谷(那珂市中部の地域)は人が増えているが、この辺り(那珂市北部)はそうでもない。利便性を求めてひたちなか市などに転出する人もいる」という話をお聞きしました。
 これは前の方で言及した中学校の生徒数の差にも関わってくる話です。市内では勢いのある地域、菅谷やその隣の五台にあるのが、生徒数の多い四中と一中なのです。
 確かに、菅谷などは住宅地という趣が強く、どんどん新しく家が建っているエリアもあるのですが、芳野や瓜連の辺りに行くと家の密度が下がります。電車の利便性も菅谷以南のほうがよく、スーパーの密度も高い。一つの市の中でも、エリアによってかなり状況に差があることが分かります。
 全国的に見ても人口増が目立つ茨城県守谷市でも高齢化率が高い地域がありますし、まちづくりを語る上では市町村という単位は大きすぎるのではないかと最近思います。

 農作業体験を終え、今回の活動は無事終了。ぷりっぷりのトマトとミニトマトをお土産にいただいてしまいました。本当にぷりっぷりでした…早速その日の夜にスープにしておいしくいただきました!

 今回の体験は、本当に貴重な体験だったと思いますし、新たな一歩を踏み出せたなという実感もあります。ずっと触れたいと思っていた農という分野に触れることができたからです。茨城県は全国屈指の農業大国。そのまちづくりを語る上では、農について知ることが必須なはず。今回、その一歩を踏み出せたと思うのです。
 今回の活動を通して、地域インターンシップという企画もさらにブラッシュアップしていきたいと思います。

 最後になりましたが、当企画にご協力くださった皆様、温かく迎え入れてくださったマルシェ関係者の皆様には心より感謝申し上げます。茨城に希望をもたらすような存在になるという夢を抱いて、これからも活動を展開していきたいと思いますので、温かく見守っていただければ幸いです。


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