俳句|リラダンのパリの豪奢よ鐘冴ゆる
豪奢、なんて漢字は画数が多くて鬱陶しいから、冬に使いたい気がしたわけで。
『ある夜、それから幾ばくもなく、ド・モール卿は、バルベツト館の王妃の傍らに侍してゐた。時が経つた。逸楽の疲れが二人の恋人を眠りにさそつた。
突然、ド・モール卿は、パリのどこかの、遠打ちの、痛ましい警鐘の音を聞いたやうな気がした。
彼は身を起こした。
——あれは何でせう?(と彼は訊ねた。)
——何でもありません。——棄ておきなさい!……(と歓ばしげに、眼もひらかずに、イザボーは答へた。)
——何でもないんですつて? 私の美しい女王、——半鐘ぢやないかな?』
『王妃イザボー』ヴィリエ・ド・リラダン 齋藤磯雄訳
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