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明烏

ふとんとは恐ろしいものである

人々を堕落させるために
悪魔が作り出した発明、
それが布団である。

手足の自由を奪い、
勤労意欲を低下させ、
時には人との交わりさえも遮断する。

飲み込まれたものは
外界との繋がりを断ち
やがて、何も考えなくなる。

偏った考え方ではあるが
これらをすべて否定できないところが
ふとんの魔力であり、魅力でもある。

全く別の考え方もできる

人々にぬくもりを与え
安寧と平和をもたらすもの。
神が与えし救済の神器。

寒き冬には、特に良き。
ある時は羽根のように軽く
やさしく身体を包み込む

あらゆる雑念を打ち払い
ただひたすらに幸福のみを感じ
境地に達すれば、世界の平和と
セロリの撲滅を願わずにはいられない。

堕落と安寧は背中合わせとなり
重く、いや軽く、私を覆うのだ。
この事実に誰が逆らえようか。

チキンレースin布団

世界に数あるチキンレースの中で
最も過酷だと言われているのが
「真冬の布団チキンレース」である。

朝は城内にいる使用人わたしだけでなく
女王つま行水シャワーを所望されるため
どちらが先に支度をするか、お互いが
タイミングを見計らっている。

雪国の浴室ヒートショックは
強靭な肉体を持つ戦士であっても
非常に危険な特殊攻撃である。

命が惜しい場合は先陣を切ることは
オススメしない。
出来る限り後発で、脱衣所にも
浴室にも、ぬくもりがある状態で
突入する戦法が正しいと言えよう。

そんな兵法を知ってか知らずか
「んン…時間大丈夫なの?」と
いかにも今、目覚めたかのような
寝ぼけ声で語りかけてくる。

何時間も前から、何度も
鬼アラームを仕掛けておいて
そんな冗談が通じると思っているのか。

「・・・むぅぅ」

分かったような分かってないような
返事をし「もぞり」と寝返りを打つ。
優しい言葉の裏には
「先に浴室を温めておきなさいよね!」
という意味合いが込められているのだ。

口では言いながらも
脚を絡めてくる花魁なんて
現実にはいないことを悟った。

切なくも悲しい冬の物語である。


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