涙鉛筆 (ショートショート)
数年に一度、5分だけ罪人も無間地獄で休める。アドルフが牛頭に今回の涙鉛筆の長さを聞いた。牛頭が帳簿を開く。
「3センチだ。描くか」
アドルフ頷く。
「最近お前は責めのたびに泣くが、お前の命令で虐殺された被害者の苦しみが理解できるようになったか」
アドルフは自分の涙でできた鉛筆を受け取り無言で傷だらけの腕に直接絵を描く。だが書く端から涙のように溶け水滴になるので定着しない。それでも絵を描いたつもりになれる。馬頭があと2分だと告げた。
アドルフはここで永久に牛頭馬頭から拷問を受けて死ぬ。生き返っては苦しみながら死ぬ。あと数百万人分はある。
ただ本物の後悔からできた涙は罪人の望むものに変わる。罪人によっては銃弾になったりはするがアドルフは元来画家志望だったから。
アドルフを刺すナイフを研ぎながら牛頭馬頭が話しかけてきた。
「近日中に新入りが来る。罪名はお前や星輪や毛沢山と同じ。名は裏地美瑠普京。彼の涙は何に変わるかな」
ありがとうございます。