見出し画像

深煎り入学式 (ショートショート)


 俺は鉄の上にいるようだ。真っ黒で、周囲が盛り上がっている。天井は真っ白。どういうことかと思っていたら、足元がやけに熱くなってきた。いや、マジで熱い。フライパンの上にいるようだ

 ふと、目の前にヤジルシマークが出現した。狂おしく点滅している。俺は足をやけどさせながら、ヤジルシに向かった。ヤジルシは俺の速度にあわせて後退していく。
 どこからか、声が聞こえてきた。

 ……これが炒めるということです。炒るともいいます。つまり食材に火を通すことです。

 と、視界が開けた。茶色のカゴの中のようだ。古風な編み目模様が見える。ここは足元はそんなに熱くないが全体に乾燥して、俺の身体の水分が消えていく。これもつらい。ヤジルシをさがしたが、見つからない。

 また声が聞こえてきた。

 こちらは、あぶる方の煎る、ですね。食材の水分を飛ばして乾燥させることをいいます。なんて美味しそう…良い入学祝の品物になりそうです

 俺は食材だったのか。困るよ。

ありがとうございます。