チャリンチャリン太郎 (ショートショート)
人間は特殊消化剤の服用で排泄しなくてもよくなった。
そして内臓も好きに変えられるようになった。
新しいもの好きの太郎は、すぐに飛びつき、食道と胃と小腸、大腸までを広口花瓶使用にした。内部は備前焼だ。それでもって堅いものを食べて体内に響く音を楽しむ。最初は煎餅や芋ケンピだったが、やがて硬貨を食べるようになった。この食用硬貨は、精製時期と場所によって音も違う。食べると使用不可になるので、現代で一番贅沢な食べ物だ。太郎から、いつもチャリンチャリンという音がする。
太郎の妻として面白くない…妻は人間の音源加工化に反対するグループに相談した。
「これを消化剤の代わりに飲ませて見ろ」
果たして体内備前焼にヒビができたらしく、チャリンチャリンという音がしなくなった。もうお金もなくなったしちょうどいい。妻は泣く太郎に特殊なゼラチンをあげた。これでもう何を食べても食べ物は沈んでいくだけで音はしない。
元来人間はそれでいいと思う。
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