音声燻製 (ショートショート)

　ぼくたちは、同じ日に転校してきた。ぼくは訓生 くさい太郎というが、前の学校で臭い太郎と言われて虐められていた。

　同じく草井花子も前の学校で臭い花子と言われていじめられていた。それが妻との初対面だ。

　案の定、臭い太郎花子とワンセット虐めにあったが平気だった。お互い燻製が好きでお弁当には何らかの燻製調理品を入れていたがそれも虐めの原因になった。名前から連想される臭いに対する嫌悪感が来るのは何故か。燻製の臭いと美味とは脳内のどこに直結するか。ぼくたちは、燻製味覚心理学と燻製栄養心理学を独学で学んだ。

　やがて訓生草井 くさいくさい燻製会社を興し、保存がきき栄養豊富、かつ安価な生野菜や生魚の燻製を作って売り財をなす。これらは世界で重用され食糧確保に貢献した。

　虐めっこたちは謝罪してきた子から雇った。これでやっと、臭いヤツという過去の音声の縛りから解放され、脳内には彼らはじめ世界中から来る感謝で溢れている。