秘密警察を宣伝してみる (ショートショート)
我が国最大の広告代理店、雷通本店前で一人の老人が古いノートを抱えて来訪する。そして戸惑う受付の社員に自己紹介を述べた。
戦前の日本に特別高等警察、通称特高があった。いわゆる秘密警察だ。だが敗戦時にGHQの命令で解体になった
…我が雷通にどのようなご用件が…
吾輩はその特高の生き残りだ。これは貴重な特高の思い出ノートで出版すれば売れる!
雷通はノートに触りもしないで即答した。
我が社の顧客は法人に限ります。では、忙しいのでこれにて
まて、雷通は先の東京五輪で談合したろ? 税金の横流しをしやがって許さん
公判中ですので意見は言えません
そういうと思った。だから秘密警察が出てくるんだよ
老人はノートを広げ、火をつけた。すると壁に青白い火が走った。建物の中にいた社員全員が避難すると、その瞬間に建物が瓦解した。
どうだ! これは秘密警察の存在を示す大きな宣伝になる
そういうと老人は姿を消した。そのノートは幻の自費出版として今誰もが求めている。
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