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夜からの手紙 (バレエショートショート)

 

 藍は某振付師から、モーツァルトのオペラ「魔笛」への出演要請をされた。しかも配役が「夜の女王」。
 大抜擢だった。かの有名な「復讐の炎は地獄のように我が心に燃え」 をバレエで表現するらしい。オペラ歌手を前面に、バレリーナが歌詞を動きでもって補助するのはあるので藍も引き受けた。
 しかし顔合わせで、群舞役のバレリーナの敵意むき出しの視線に動揺した。嫉妬されているだけだが、怖くて涙が出た。
 振付師に相談したら「睨み返せ」 と取り合わない。とうとう藍はベッドから出てこれなくなった。降板になるだろうと藍は泣いていた。
 ある日、夜の女王役のオペラ歌手から手紙が来た。真っ黒な封筒に金文字で藍の名前が刻印されている。開封してみるとこれまた真っ黒な便せんに金文字のインクで「出ておいで」 とあった。
 夜から来たような手紙なのに、闇を裂くような激励の文字が光る。藍はこの手紙を御守りにした。そして急いで振り写しに出るべく身支度をした。


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たらはかにさまの企画に参加中です。
今週のお題は「夜からの手紙」

表題の画像はラムダウ版、夜の女王です。下は彼女のウィキ。素晴らしいソプラノ歌手さんです。


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ふじたごうらこ
ありがとうございます。