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令和6年10月14日(月・祝)のあたりさわりないエッセイ日記

今年も10月1日から31日まで毎日エッセイ日記を書くことにしました。


本日のテーマ
施設入所者の話


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 老人や障碍者を収容する施設はまだ不足気味です。見切り発車で場所だけ確保して先に入所者を入れて、施設奥がまだ工事しているのに、もう稼働しているところもある。
 過日、そんなところに、わたしは配達に行った。体育館みたいな場所に、ドアを開けたらすぐそばにベッドがある。あきらかに認知症が進んでいる女性の患者が寝ている。
 パテーションもないところに、その玄関ホールに六名並べられて、奥に大きなテーブルがあり、配膳されたままの食事とコップが置かれている。わたしの貧弱な聴力でも大きなガガガ~という工事音が奥から響く。

 わたしは薬が入った袋を渡しながら「コレは、ちょっとひどくない?」 と言っちゃいました。若い女性職員は肩をすくめただけです。奥から年配の職員が来て「もちろん完成したら、奥で休んでもらいますよ」 と言いました。やや切り口上で、来所者の思っていることは見通しているように受け止めました。寝ている女性たちは、軽く口を開けたままで反応しない。耳が悪いのだろうなと思った。
 介護しきれなくて、早く施設入所させたい家族も多いし、これはかわいそうと大口叩けない。
 また別施設だが、個人的に驚いたところがもう一か所あって、デイケアに配達に行ったら、大きなテーブルに車いす患者が向かい合わせに並ばされている。通常、デイケアのテーブルの上には、お花や折り紙、塗り絵など、はさみなど使わなくても手作業ができる環境にしているところが多いが、そこは何もない。そのままだ。
 利用者は全員が認知症で、全員が己の膝を見て、うなだれているか、あらぬ方向を見てぼんやりしているだけ。
 担当者に薬を渡して、これから何をするのですかと聞いたら、やる気のなさそうに「どうも~」 と言っただけ。
 薬受け取ったら、奥に引っ込んでしまった。利用者を見守る気配すらない。
 大丈夫なのかと思っていたらやはり大丈夫ではなく、スタッフへの給料の遅配が続き、利用者の家族からのクレームもあいつぎ、施設代表と土地を貸していた地主ともめ事があって訴訟中だった。しかもいろいろあって泥仕合。結果、施設ごと消滅した。

 利用者を粗略に扱うところは、本当にモノ扱いするのだよねって話です。仮にも若いときはバリバリ働いていただろう人を……。

 ある施設経営者は入所者を「宝石」 にたとえました。介護度数によって違いますが利用代金に取りはぐれはありません。毎月きちんと、お金が入ります。施設を作った端から満員になってお金も貯まる。
 介護士へのお給料に反映せず、次の施設の建設に回したり、税金よけに経費でできるだけばれにくい高級品を落としたり。
 経営者自身の前身が怪しい人もいるし、ちょっと闇を感じる。
 お金儲け第一の施設だと、末端の介護士が報われない思いを抱えて一番弱い立場の入所者を虐待してそりゃ事件にもなるだろう……と思ってしまいます。

 窓際野良薬剤師のわたしごときがこんなこと書いても何もならないけど、たとえ認知症の人でも「こんにちは」「お大事」 と言うだけでも、言わないよりも良いこと。彼らは置物じゃない。生きているのだから。

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本日の作品紹介

4コマ難聴漫画佳作受賞作
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