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Photo by
fukuzou
彦星誘拐(ショートショート)
彦星と織姫は夫婦だったが、織姫が機織りの仕事を放棄したため神様が離縁させた。すると寝付いてしまうのでお情けで七夕の夜のみ、会える。
織姫の同僚たちも彦星をねらっていた。一年に一度なら妻の座を譲ってもいい。彼は天界のアイドルなのだ。織姫は七夕の日に近づくにつれて惚気てくる。
むかついた同僚たちは、織姫に七夕に睡眠薬を与え、皆で川を渡って、彦星を誘拐した。周囲には牛はいず、彦星も乗り気で簡単に誘拐できた。
しかし牛たちが迎えに来た。
「彦星は別名牽牛…牛がついてきちゃう」
同僚と目覚めた織姫は牛をかき分けて突進しようとするも、牛が阻む。織姫は泣きわめいた。
「実はこのようにして牛と格闘しないと彦星に会えないのよ。だから結婚したといっても、牛のせいで私はまだ…」
泣く織姫を囲んで皆は、牛に囲まれて帰る彦星を川沿いまで見送った。そして一斉にため息をついて皆で同じ言葉を言った。
「地上でもいいから、誰かいい人いないかしらね…」
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