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小説『覚醒』

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2020.3.11始動。2023.3.11終結。怪異とたたかう霊能者一家のおはなし。眠れぬ夜にマドロミを。
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#文学フリマ

覚醒illegal #5

覚醒illegal #5

「いつまでも調子の良い傍観者でいられると思うなよ」
虚子の呈した苦言は黒子の脳裏に卵を産みつけ、それはすでに孵化して夥しい数の蟲が体内で蠢く。寄生した言霊の群れが黒子の肉体機能を奪ってゆく。
鼻血がどろりと垂れてきた。皮膚は高度な熱を帯び今にも蒸気を上げながら焼き切れてしまいそうだ。口腔内が異物感で充たされている。鏡で見なくとも舌触りで理解る。歯が増殖している。口いっぱいに拡がる痛みと痒みに幾度も

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覚醒illegal 〆close

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死に損ないの藝術家が夜天に吼える。
あの色だ!
俺がサガし求めていたのはあの色なんだ!
神宿の上空に、溝の底の底の底からサラしあげた泥と反吐露と死霊の怨みを磨り潰し煉固めて精成したが如く喪失の黑を纏う肉塊の球が、ぷかりと浮かんでいる。
バララララバララララと翅音を鳴らす、呆国のシンボルを刻んだ戦闘機が、両眼に具えるヘッドライトで黑い標的を捉えた。
一人の兵士がドアを開け放ち、機内から身を乗り出した

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