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鳥取に挑む
梅雨曇天の下、霧がかった濃い緑の山肌を車窓に映しながら、特急列車「スーパーいなば」はうねり音をあげてガタガタと岡山から鳥取へと北上していた。しばらくすると、立派な瓦葺きの民家が現れた。辺りには田植えを終えた真四角の水たまりがいくつも広がっていた。
本当にのどかだ。列車が登っていくにつれ、清流に沿って営みが続いていた。ひっそりとした佇まいに、思わず住んでいる人の生い立ちを想像してみたくなった。
車窓からの風景に浸っていた私は、木々が放つ緑色のバリエーションに心を釘付けにされた。自然の緑色は人工では決して真似のできないほど多彩だ。同じ緑でも濃淡や奥行きや光の当たり具合により一つとして同じ緑色はなかった。自然の神秘に感心せざるを得なかった。
鳥取市は全国では山口市に並ぶ人口の少ない県庁所在地だ。天気も曇りで街中は何か寂しかった。駅から役所へと続くまっすぐに伸びる商店街もシャッター街に変わりつつあり殺風景に見えた。でもそれがなんだ。活気だけが全てではない。確かに不動産価値には影響を与えるが・・・。
でも鳥取には多くの観光資源がある。砂丘や鳥取城。カニもおいしい。下を向いて諦めるのはまだ早い。鳥取へは多くの人々に来てもらいたいものだ。
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帰りは晴れ、帰阪には高速バスを利用した。
車窓からの風景は、列車の時よりも一層臨場感があった。列車から見えていた山にへばり付く苔のような山肌は、実は杉の大群だった。山の斜面に逆らって空高く整然と直立する杉林はまさに圧巻だった。
緑色の豊富なバリエーションと青い空とのコントラストが眩しすぎて、私は雄大な自然の虜になってしまった。
緑色の美しさを見せつけられた鳥取紀行となった。