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読書ノート 「リュシス 恋がたき」 プラトン 田中伸司・三嶋輝夫訳


「友愛について」という副題をもつ『リュシス』は、初期から中期への移行期の作品と推定される。ここでは、老年期にさしかかったソクラテスが、美少年リュシスとその友人メネクセノスを相手に「友」とは何か、「友愛」とは何かを論じていく。この主題は「誰かが誰かを愛するとき、どちらがどちらの友になるのか」という問いを追求していく形で展開され、対話がアポリアーに陥ったことを宣言したところで閉じられる。本作は、のちにアリストテレスの友愛論の土台となったように、今日まで広く読み継がれている。

この主題は、もう一篇の『恋がたき』に連なる。偽作との説も根強くある本作であるが、「哲学について」という副題を冠されているように、「知を愛すること」としての「哲学(ピロソピア)」という主題は、「愛すること」という根本的な問題を介して『リュシス』につながっている。同じように二人の少年にスポットライトがあてられる本作は、真作か偽作か、という問題とは別に、味読する価値を十分にそなえたものである。

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 「リュシス」は古代以来「友愛あるいは友について」との副題がついている。友とはなにか。最終的に、わからないという結論で終わるのだが、そこまでの思考、対話、逡巡、袋小路、アポリアの発見で、人間や愛などについて思いを馳せるのが、本質的な目的であろう。良き者同士、似た者同士が仲良くなるだけではなく、その反対の者同士の友愛を論理的に納得感を持って説明することなど、できない。これは「意識」の薄っぺらいところ、イデア的な顕在化したものしか見ない「意識」には困難で、やはりフロイトの「無意識」の登場を待たなければならない。ギリシア時代は明晰な考えが一般的、普通で、それ以外のものには霊やダイモーンの位置づけを与え、少し低きものとしてみることで、歪な世界が浮かび上がっていたのだろう。

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