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読書ノート 「ソシュール超入門」 ポール・ブーイサック
ソシュールの解説書といえば、個人的には丸山圭三郎の『ソシュールの思想』が王道だと思うのだが、今回は「超入門」ということで。
「フェルディナン・ド・ソシュールは、ジュネーブで生まれ、ライプツィヒ、ベルリン、パリで歴史言語学を学び、インド=ヨーロッパ言語学の専門誌に論文を数本発表し注目を集めた。『一般言語学講義』(1916)は1907年から1911年にかけてソシュールの授業を受講していた学生が書き留めたノートを本人の死後に二人の同僚が編集して出版された書物である。ソシュールの思想は二十世紀ヨーロッパの知的探求において、重要な知的潮流となった記号論及び構造主義の源流となった」
重要な概念として、次のものがある。
言語記号が本性として持っている恣意性の発見
言語記号の構成要素としての「シニフィアン(意味するもの)・シニフィエ(意味されるもの)」の区別
共時(態)と通時(態)という二つの言語の捉え方
二つの用語、「ラング(体系としての言語)と「パロール(使われている状態としての言語)」の対立
「ソシュールが考案したラングを説明するのは難しい。なぜなら、私達は言語を、物体や概念を指し示す語彙の集合体、つまり物体や概念に付けられたラベルのようなものだと思いがちだ。ソシュール自身、この認識論的洞察を明快に説明する難しさと格闘していた。ときにその妥当性を疑うこともあったが、言語の観察・探求から証拠を集め、この思想に立ち返った。ラングとは言語を可能にしている差異に基づく関係性のシステムなのだととらえれば、ソシュールの思想の全体を把握することは比較的簡単なのだが、ラングの実際の機能のしかた、ラングのシステムが実際の形として表現されているようすを理解するのはとても難しい」
「言語の秘密をたどろうとする者は天と地のすべてのアナロジーから切り離されるのだという事実を考慮しなければならない」
「言語システムにおいては論理的な出発点はないし、私たちを導く揺るぎない灯台も存在しない」
「ひとつひとつの形の意味は、形の間に存在している差異そのものである」
「現象もまた関係である」
「記号システムと呼ばれるものがあるとするならば、それは共同体に属している」
「ラング、すなわちあらゆる記号システムは、ドック入りしている船ではなく、航海中の船である。一旦洋上に出れば、航路の目印を探すのは無意味なことだ。船の外形を吟味し、エンジニアが設計した内部構造を頼りに進んでいくしかない」
「すべては思考の外側で起こる。音声変化は思考に否応なく押し付けられるものであり、記号の物質的状態がつくりだす唯一の隙間において生じる」
「ひとつひとつの単語は、通時的視点と共時的視点の交差するところに存在している」
「言語の本質(「ラング」)の基本的性質とその関係は数学的に表現されうる。このことが理解される日がきっとくることだろう」
「言語の中には永続的な特徴はなく、時間の法則に支配された過渡的な状態が存在しているのみである。言語(ラング)はそれ以前と以後の間にある過渡的な状態の永久的連続そのものである」
「象徴が創造されることは確かにあるが、それはつねに伝達時に生じる自然な間違いの結果なのだ」
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