連載小説【夢幻世界へ】 断片2 犬と井戸
【断片2】
「十日頃の夢は次のようなものでした。
ひとつの深い井戸がありました。
その傍らに、二匹の犬が徘徊していました。
井戸は深く、四、五十丈(五十~七十メートル)の深さです。
犬たちを愛でていると、黒い犬が手違いで井戸に落ちてしまいました。
悲壮な鳴き声を一度だけ上げ、その後聞こえなくなったので、ああ死んでしまったのだと思いました。
そばにいた白い犬も危ゆく落ちそうになりましたが、こちらは近くの月桂樹につながれており、落ちることはありませんでした。
なかなか、賢いやつだと感心しました。
自らを自らで縛り、危険な奈落へ落ちることを防いでいるのです。
この夢が私に知らせているのは、黒犬は罪業であり、白犬は善であります。
この夢を見るにあたり、なにかと現実世界でも兆候、徴がありました。
色々考えさせられる夢でした」
(明恵上人「二月夢記」より)
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