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用字用語の実例 第2回目の「校正勉強会」――中止のため途中経過のみ記録

                                        

【共】=【共同通信 記者ハンドブック】〈共同通信社〉 
【広】=【広辞苑 第六版】〈岩波書店、カシオ電子辞書〉
【必】=【標準 校正必携〈日本エディタースクール〉】 
【技】=【新編 校正技術〈日本エディタースクール〉】
【ル】=【文字の組方ルールブック〈日本エディタースクール〉】 
【JISル】=【JIS Z 8208:2007改正 
        印刷校正記号一覧】


※第2回目の「校正勉強会」は――引き続き、校正でよく出てくる用字用語の使い分けを中心に、テキストをひもときながら進めていきたいと思います。それではしばしの間、お付き合い願います。

  1. おまちどうさま×→おまちどおさま○  こんにちわ×→こんにちは○  どおも×→どうも○
    「おちどおさま」は辞書等の表記では「御待遠様」とあり、「待ち遠しい」と同じく「とうい」ではなく「とおい」。「こんにちは」の「は」は助詞で「今日は(ご機嫌いかが…例)」のように続く挨拶語の略。「どう」は漢字では「如何」と宛てる。「どうしますか」「お一つどう」に同じ(すべて 【広】より)。
    ※「おちどおさま」は小学館のマンガ『美味しんぼ』において「おまちどうさま」と表記されたことも誤用の広がりの原因になった可能性もあります。マンガには「吹き出し」といわれる「セリフ」が書かれたものがありますが、要するに「話し言葉」であるためにマンガは「う」→「お」や「は」→「わ」や「お」→「う」に書かれてもそのまま違和感を持たれないまま通用しやすいジャンルといえます。かつて講談社の校閲五部で「こんにちわ」は「こんにちは」に校閲権限で直していましたが、ある出版社のマンガのセリフでは「こんにちわ」はそのままでした。同様に「どおも」も意図的にそのままにしたことがあります。編集方針によるのですが、当時マンガ編集者の私は編集権限で「どーも」や「おまちどーさま」に直したこともありました。話し言葉の場合はむしろ長音で逃げるということもできるわけです。ただし、いずれにせよ、語源的に表記として誤っているものは辞書にならうのが無難であるといえるでしょう。

  2. 「すべきだ」と「するべきだ」
    「べし」を文語ととらえる場合、文語「べし」に接続する動詞は文語と考えるのが一般的な用法であるといえる。「べし」は動詞の終止形に接続する推量の助動詞であるから、現代語「する」は文語「す」となるため、終止形は「す」。つまり、本来の用法でいえば「すべし」となるため「するべきだ」は「すべしだ」とすべきだという考え方がある。
    ※東京新聞校閲部においてひところ編集局長から「するべき」は「すべきだ」と厳しく修正するように言われていたことがあります。その頃からの疑問に、では「べし」は「現代語ではないのか」というものがありました。例えば、「べし」を現代語で使えると考えた場合、「す」の終止形は「する」となり、現代語として「べし」が使えるなら終止形「する」だから「すべき」でなく「するべきだ」でよいのではないかということでした。ただ、習慣として、古文として覚えている用法をわざわざ乱すようなことは日本人の感覚としてあまりしたくないということがあるようにも思えます。

  3. 動じず×→動ぜず○
    現代語上一段動詞「動じる」の未然形「動じ」+未然形接続の打消しの助動詞「ない」→「動じない」はOK。ただし、文語の打消しの助動詞「ず」を使用する場合、「動じる」は一般的には文語「動ず」のサ変動詞に接続することになる。「動ず」の未然形「動ぜ」+未然形接続・打ち消しの文語の助動詞「ず」→「動ぜず」となる。「動じない」はいいが、「動じず」は「~をせず」がいまだに「~をしず」と通用しないことと同様に「動ぜず」が望ましい。
    ※東京新聞校閲時代にも運動面で「動ぜず」はよく使われましたが、「動じず」は「動ぜず」に直されていました。その際整理部記者などへの説明に有効であったのが上述した「~をしずとはまだ言わない」ということでした。上記二つの共通点はやはり、文語から口語、旧仮名遣いから現代仮名遣いへのシフトの際の問題点であるといえます。文語は文語に口語は口語に接続というのは文法上の決まりであって、現実問題としては交じり合うというのはあって当然であると思います。この問題のとらえ方は簡単ではありませんが、「文語と文語」「口語と口語」の接続関係を無理には壊さないことと、文語と口語が元々異なる文法法則を持つことだけは頭に入れておくことだと感じます。校正の仕事上では、こういう使い分けがある仕事の場合、編集方針を確認しておくことが肝要であると考えます。

  4. 行かさせていただきます×→行かせていただきます○ 【「サ」入れ言葉】

  5. 見に行く○  見て行く→見ていく  持ちに行く○  持っていく  やりに行く  やっていく

  6. ~だそう→~だそうだ  ~すべき→~すべきだ  【「ダナ」活用について】

  7. ~するべきだ→~すべきだ  【文語を口語で使うという場合の問題点】

  8. 成せば成る×→なせば(為せば)成る○

  9. 80余年×→八十余年  80年余○

  10. ~が出来る→~ができる  ~が出来上がる○

  11. 従来から×→従来または以前からなど○  古来から×→古来または昔からなど○

  12. 乳児  園児  生徒  学生  専門学校生  高専生  大学院生

  13. 餅米→糯米(cf. 粳米)

  14. 円グラフ等で100%にならない場合のお断りの仕方

  15. 凡例でのお断りの書き方

  16. 並び替える×→並べ替える○  並べ替わる×→並び替わる○

  17. すごいおいしい  すごくおいしい

  18. パリっと×→パリッと○  パニクッて×→パニクって○  パニくる×、パニクル×→パニクる○

  19. 敷居が高い  ハードルが高い

  20. 煎り豆腐  煎り卵  炒り豆  炒り胡麻

  21. A及びB→ AおよびB   ~に影響をおよぼす→~に影響を及ぼす

  22. 2015年 15年  2000年 00年  1999年 99年

  23. 年号と西暦

  24. 西暦上の太陰暦と太陽暦の違いによるずれ

  25. 出典 引用と転載の違い

  26. 文節で区切って読むやり方

  27. 禁則処理とは

  28. 差別語 不快語とは

  29. 薹と苔  藝と芸

  30. 國學院大學 国士舘大 龍谷大

  31. 三ヶ日と三ケ日

  32. ら など

  33. 風光明美と風光明媚

  34. 誤り 過ち

  35. ら抜き用法

  36. 二大巨頭×→両巨頭○

  37. 二の舞 二の舞い

  38. 極める 窮める 究める

  39. 極地 局地 極致

  40. 管理 監理

  41. 功を奏する

  42. 「、(読点)」と「。(句点)」

  43. 縦組の一の前後は詰めない

  44. 拡張新字体(1)
    例えば「つかむ」を漢字で変換する場合、「掴む」「摑む」と字形の違うものが出る。この場合の「掴」の字体を「拡張新字体」という。「新字体」とは「常用漢字」において新旧字体が存在する字体で常用漢字に採用された字体を指し、「旧字体」とは新字体に採用されなかった旧字体を指す。ちなみに旧字とは異体字を含めた新字体でない字体を指すこともあるため、いわゆる元々の漢字を「正字」または「正字体」「康煕字典体」などと呼ぶ場合がある(例:塚、旧[新字体]→塚、舊[旧字体=正字体])。
    ※『康煕字典』は1716年刊の47000字余所収の権威のあるとされる字典。

  45. 拡張新字体(2)

  46. 拡張新字体(3)

  47. 拡張新字体(4)

  48. 拡張新字体(5)

  49. 「時」と「とき」

  50. 欧文校正の知識(1) ローマ数字と時計数字

  51. 欧文校正の知識(2) オックスフォードルールとシカゴルール

  52. 欧文校正の知識(3)

  53. 欧文校正の知識(4)

  54. 欧文校正の知識(5)

  55. 「お話しする」と「お話をする」

  56. 「1日」と「一日」
    「一日」には「朝から夕方までの間、終日」や「ある日」や「ついたち」という意味もあり、単に数えられる日数のみに使われるわけではない。慣用句もあり、「一度」と同じように簡単に算用数字にした場合、違和感がでるケースもあるので注意が必要。
    ※「一日中」を「1日中」と使ったり、よい「1日」だったという使い方に違和感を覚えない人が増えているとは思えませんが、実際目にする機会があり「困ったものだ」と思わざるをえません。「一度」と同じく「数えられる数詞」と考えるか「副詞的用法」ととらえるかで表記はかわると考えておくとよいでしょう。

  57. 「立ち上げ」と「立ち上げる」と「立ち上がる」

  58. 「離発着」と「離着陸」 「射程距離内」と「射程内」 似たような重複語のパターンの対処法

  59. ローマ字の考え方



校正基本ルールⅠ                                       

① 原稿照合の校正は「元原稿」「指定原稿」「資料」等を【完全原稿】の状態で校正者に渡す。
② 校正依頼カンプ等のスケジュール現時点での進行状況および校正基準、クライアントの要望などの情報を必ず伝える。
③ 入稿・下版前の案件を優先が原則で、全体の校正スケジュールを管理する人間から校正の指示を受けたのちに校正をする。
④ 校正後に次回のフィードバックのため、校正者の注記・疑問だしの回答を確認できるようにする。
⑤ 辞典類・ハンドブック等は2010年以降の「新常用漢字」に対応できるものを使用すること。
⑥ 校正組版のルールは原則として最新のJISルールに対応したJISルール冊子やそれをもとにして作られた日本エディタースクール等の校正基準を基本とする。
⑦ オープンタイプフォントで対応できるフォントの媒体は、なるべく正字体を使用する。


※①完全原稿であればどの校正者にも確認がスムーズで時間短縮につながる。最新のデータに合わせるとクライアントから指定があった場合、編集作業で例えばその最新データの過去号をコピーし、指定を加えることで校正時間短縮が可能。

※②校正者は状況に合わせて注記等の対応を変えるため、できるだけ具体的な要望が望ましい。

※③故・美坂哲男氏をはじめ著名なプロ校正者によれば、校正の限界(熟練のプロに限定)は3時間×3(30分以上の休憩をはさむ場合)であり、それ以上の校正は危険であると認識する必要がある。それ以上になる場合は翌日に回すなどの工夫が必要。

※④校正者はたいてい過去に校正した媒体を覚えているので、各校正者が疑問だし箇所の採用不採用を確認させることで、次回の校正の参考になる。ゲラをみただけで、何を要求されているか判断できるので必ず見せるほうがベター。

※⑤学校や公共機関などの媒体は新常用漢字を反映させたものが説得力をもつので、2010年の改定が反映されていることを確認のうえ、購入することが望ましい。

※⑥JISのルールは工業規格ゆえに製版寄りで、日本エディタースクール等のテキストのほうが、より紙媒体(編集・ライティング)に合う基準といえる。

※⑦いわゆる拡張新字体は俗字のことであり、サービスとしてできるだけ正字であることが望ましい。正字とは清朝成立の『康煕字典』の字体を指す。インデザインでは句点コードを入力して正字を特定させることも可能。印刷所の出力の関係で、正字を使うべき媒体についてはリュウミン等のベーシックなフォントを選ぶほうが無難である。

校正の基本ルールⅡ                                    

◇一般的な校正の仕事上のルール、必要な道具・資料等
① 拡張新字体
② 校正用の辞典類
③ ポイントスケール
④ 定規


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