だから自棄を起こしなさんな、

この記事には精神障害者への偏見差別的なことばが含まれますが、筆者本人の意図に基づくものではないので、誤解の無いよう、よろしくお願いいたします。

私の父(昭和30年代生まれ)はもう定年退職したが、勤めていた職種柄、精神科領域の病気に多少の理解や知識があると思っていた。いや、それがむしろ枷になっているのだろうか、双極性障害とてんかんを患う私に対しての口癖がある。「お前は統合失調症じゃないから大丈夫」

閉鎖病棟からの退院直後も言われた。「な、言ったろ、お前はキチガイじゃないって、だから、分裂病じゃないから大丈夫なんだって」私は退院直後でとても情緒不安定で、いつもなら受け流すその思い込みのような発言に問うてみた。「じゃあ、私が、統合失調症になったらどうするの?」退院直後で私が弱音を吐きすぎて父を疲弊させてたからかもしれない、いやそうだと信じたい、返ってきた答えは、こうだった。「そりゃ分裂しちゃったキチガイに自我があるわけないんだから一生閉鎖にいるだけだよ」と。

私が閉鎖病棟に入院中、朝6時半から朝食の配膳の7時50分、1時間半弱だけ、適切な時間、お話しさせてもらう母親くらいの年代の素敵な女性がいた。Aさんという方だった、もちろん、閉鎖にいるということは、何かを抱えているということなのだろうけど、彼女と話していてもいつも明るく、朗らかで、なんで彼女は精神科の閉鎖病棟なんかにいるんだろう?と思わせるような、いわゆる世間が持つ閉鎖病棟のイメージからはかけ離れた女性だった。私が悩んだり、マイナス思考になったりすると、笑い飛ばしてくれたり、少々毒気のある女子トークで元気を出させてくれたり、共通の趣味の話題に持ってってくれたり、母親みたいに甘えてしまった存在だった。彼女と話すようになって中ごろだろうか、今まであえて避けてきた病気のはなしになり、彼女は自分が統合失調症であることを明かしてくれた。私も、双極性障害はいまは薬でだいぶ落ち着いてるほうだけど、てんかんで仕事首になり自棄起こしてODした話なんかをした。病気のことについて話したのなんてそれくらいだった。退院直前、こんなことを言われた。ねえ、Yちゃん、いまはね、どんな病気だって、薬や適切な治療で寛解したり、落ち着いたりすることもあるの、だから自棄を起こしなさんな、この先人生まだまだ、私より長くて可能性もあるんだから、生きてきなさいね、そんなことだった。私のマスクの下は、涙でぐしょぐしょだった。

私はそのAさんのことをとても尊敬している。退院後もAさんのことを思い出す。きっと、またODしたくなったときに心の中のAさんがストッパーになってくれるかもしれない。尊敬している、人格者、つまり、自我のあるしっかりとした人間だ。それだけに、先の、父の発言はショックだった。ショック、悲しさ、怒り、呆れ、見捨てられ不安、いろんな感情がぐるぐるしている。

父との関係は今は良好なだけに、どうすべきなのかがわからない、明日、主治医に相談してくる。

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