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普通を歩く
いつの間にか歳をとっていた。
振り向けば地底まで届くんじゃないかと思うほどの谷が出来ていた。
中学、高校は生きづらかった。
自分をさらけ出すたびに輪からはみ出た。
何度も這い上がるのを諦めようと思った。
そんな時、出会った音楽たち。
憧れたバンドマン。
救ってくれた曲。
そんなバンドマンと同い歳になってて、
周りを見渡せば「普通」を歩いてる。
もっとロックな道を歩むと思ってた。
あの頃のとがったバンドマン達も歳をとってた。
憧れたバンドマン達の新譜は「普通」を描いてる。
それを哀しく思ってる自分がいる。
でも、それが一般的な幸せなんだと思う。
いま幸せで良かったんだと思う。
世の中全てに対して憤りを感じてたあの頃はもう戻ってこない。
若い恋愛を小説のように描いてたバンドマンはもう居ない。
終わったのは始まったから
負けたのは戦ってたから
別れたのは出会えたから
ってわかってるけど
もう、負けられないのか。
そう思えば、後ろにあるあの谷は「普通じゃない幸せ」だったのかもしれないと思える。