妻子との出逢い。②

「お。この人の声、いいな。」

私はすぐさま乗っていた船から、そこへ降り立つことにした。

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東京に移り住んでから2年後の年末。

祖父母の家の2階。                         父に対して私は土下座をしていた。

簡単に説明すると、東京で借金を作って生活が回らなくなったから実家に帰らせてくださいと.....


あぁ、書いていて恥ずかしくなってきたな。


父はそんなどうしようもなかった私の土下座を、怒ることなく受け入れてくれたのだ。

とても感謝した。もう変わろう。馬鹿なことはやめよう。しっかり自立するんだ。自分勝手にするのはやめよう。

父の言うことをもっと聞こう。

そう決意した。


決意したんだ。


.....したはずだったんだ。

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年が変わり、すぐに知り合いのガソリンスタンドとファミレスのホールでアルバイトとして働き始めた。

仕事以外では、ほとんど家から出なかった。東京に移り住む前にちょっとやらかしていて、見つかりたくない人間が1~2....3....人いたからである。 

仕事以外の時間は、PCで動画などを最初は見ていた。                                    

それからすぐに、当時人気があった某有名ライブ配信サイトに興味を持った。

とりあえず何から見ようか。

サイト内を物色していると、”クルーズ”なるチャンネルを発見した。              ”みんなで船に乗っていろんな人のチャンネルへ旅をしよう!”みたいなコンセプトのチャンネルだった。

私はとりあえずその船に乗り込むことにした。 

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数秒ごとにいろんなチャンネルに自動で切り替わっていく。雑談やら歌やらドライブやら色々なチャンネルがあった。顔出しでやっている人も少なくなかった。

ぼーっと見ていると、何個目かで気になったチャンネルがあった。顔出しではなくイラスト背景で、女性が雑談をしているチャンネルだ。      

関西弁のようだがまったりした雰囲気の喋り口調であった。

「お。この人の声、いいな。」

私はすぐさま乗っていた船から、そこへ降り立つことにした。              


初めてコメント入力をして挨拶をした。

その女性はたくさん流れるコメントの中から、ちゃんと私のコメントを拾ってくれて嬉しそうに挨拶してくれた。

私もなんだか凄くうれしかった。コメントとはいえ、久しぶりに家族や職場の人間以外とコミュニケーションをとることができたのだ。



その人がまさか、”私の妻”になるだなんて。

~続く~

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