ひとに、あいたい。
2018年 10月13日、大阪の十三にあるシアターセブンでポエトリースラムジャパン2018大阪大会が開催されました。その日、代表の村田活彦さんからのお願いで、自分は司会をお手伝いすることに。そして、これがひとつのきっかけでした。
ステージ上で見せる3分間の言葉のみを使ったパフォーマンス。それだけ聞くともしかしたら、眠たい時間を想像している人がいるかもしれません。ただ、現場でステージでのパフォーマンスを見てきた自分にとってそれは程遠いものです。
何故なら、
時に、ことばで魅せる技を見たかと思えば
時に、ことばで激しく熱くさせては
時に、ことばできゅっと心臓を掴まれたかのように錯覚し
時に、ことばで溺れていたことを終わった後に気づかされる。
そんな場所が眠たいとはとても思えません。特に、自分がお手伝いさせていただいた大阪大会はひいきめにみても熱い大会で、ドラマがありました。それは一度1回戦で負けてしまったkatsuyaさんが会場投票の敗者復活で2回戦に勝ち上がり、そのまま決勝に進出したこと(結果は準優勝)。0.1点差負けてしまったor勝ち上がった人たち。あの場にいた人はいろんなドラマを見たと思います。
なかでも自分が気になったのは、真紀さん。
自分はこの大会はいかに言葉を使って(発声や間の使い方を含む)あらゆる角度から見て優れた表現(パフォーマンスとも言います)をするかだと思っています。そこに思想があったり全くなかったりそれこそ自由だと思います。そして、
ポエトリースラムジャパン2016 日本代表の大島健夫さんのインタビュー
にもあるんですが、
>「詩の言葉、詩のパフォーマンスっていうことを媒介にした、人間性の肯定なんです。自己肯定感とか言うけど、自己なんて肯定してもしょうがないじゃないですか。そんなことより、人間ていうものそのもののいろんなことを肯定するのって凄いことだと思うんです。人間が揺れること、人間が間違うこと、頑張ること、覚悟すること、人間の勇気、人間の臆病さ、全部肯定してるのがポエトリースラムですよ。」(抜粋)
ということには凄く共感していて、その本質に文句をつけることは人間を肯定できていないのではとも思っています。
それを踏まえて。
真紀さんのパフォーマンスは衝撃でした。
どれだけひいきめで見ても言葉が凡庸で。
1度は勝ち上がりましたが、2度目は勝てないなっと。正直、思いました。
今から考えるとそれが既に大会に染まっていて、いわゆる”大会脳”になっていたと思います。
ポエトリースラムジャパンの公式HPにある村田活彦さんの代表挨拶
にもありますが、
>”The Point is not Points, the Point is Poetry”
>「大切なのは点数じゃない、大切なのは詩だ」
>これがポエトリースラムの精神です。
問題は結果じゃない。
もちろん、勝ち負けがある以上綺麗事ばかり言ってられません。勝ち上がれば、全国大会。そして、その先フランス・パリで開催されるポエトリースラムW杯。それが掛かっているのだから、勝ち負けは大事。それをすべて飲み込んだ上で、真紀さんの2回戦目のパフォーマンス。
予想どおり、真紀さんは負けてしまいました。
でも、最前列の男性は泣いていました。
一方で、自分は必死に涙をこらえていました。それは司会を担当していたから。進行役が泣いていたらその後の進行に支障が出るから。
ただ、そのこと以上に思ったのは言葉を使って勝負するこの場所において、
技術的につたないものだったとしても、
そのひと自身を、
そのひと自身が、
そのひと自身だけで勝負してくる人がいるだなんて。
ありとあらゆる方法論があります。優れた表現を観客に見てもらうために一言一句に手間ひまかけて。最高の仕上がりにしていた人もいるでしょう。その人たちの顔に泥を塗るかもしれませんが、真紀さんは
”言霊”
を感じました。自分だって魂込めてやってる、お前は何を聞いてたんだと言われてもしかたがない。それでも、言います。この日ダントツで”言霊”を感じたのは真紀さんでした。
あの大会が時の流れと共に観客の記憶からなくなっても、
あの衝撃だけは今も自分の胸を熱くさせます。
ちなみに、この事実は大会終了後の打ち上げの席でご本人に声を大にして伝えました。大変驚いていて、同時に喜んでいたご様子でした。
後日、
あのパフォーマンスを見た後のこれは説得力がありすぎて。
自分は”言霊”を信じてやみません。
ジミ・ヘンドリックスが「僕にとっては音楽が宗教なんだ」と言っていましたが、何も信じずに生きている人などこの世にいるのでしょうか。
自分を信じて。
家族を信じて。
友だちを信じて。
親友を信じて。
恋人を信じて。
信じる対象に”言霊”があるだけで。
HIPHOP的に言うなら、
真紀さんは真紀さんであっただけの話かもしれません。
それでも。
その”言霊”の先にいるそのひとに会いたいと思うし、
自分もそんなことがしたいと強く思ったのでした。
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