「その先の道に消える」中村文則
縄師に突きつけられた信仰と学問どちらをとるかの決断
生育の呪い、呪いを抱え社会を生きる事の自身と他者、双方向への有害性
呪いから解放される為の緊縛
解放させてあげたいという愛
それ故のSとMのスイッチング
知り尽くした後の虚無
それぞれの生の役目
性を神聖に扱いながらも壊していく人達の物語
表紙に一目惚れして買ってずっとベッドの枕元に飾っていたんだけど
ふいに読む気分になって一気に読了
作中に出てくる駅名があまりに地元すぎて検索したら
作者が通ってた中学の道路挟んで向かいの高校出身の方だった笑
緊縛の歴史についても触れられていて
天皇制や神の話、元々は江戸時代に罪人が縛られたのが発祥で
縛られた罪人に人々が魅せられたのは法を越えた者に対する羨望であり
神聖な縄で縛るという事は
この世界から別の場所へ行くことだと
登場人物達がほぼ葛藤などする事もなく
取り憑かれたように出会い、それぞれの役割を果たして解散していく
死んでいく登場人物にも
あぁ、今死ねて良かったね、と思った
それは役割を、運命を全うして生を成仏させていたから
やっと楽になれたね、報われたね、と
美しい描写と相まって
極上の尊厳死といった感じで
なんだか清涼み溢れる読後感
衝撃を受ける、という感じではなく
静かに染み込んでくる様な
朧気に知っている感覚を再確認した小説だった