売れる力(読書メモ)

「本質を追求する」

企業経営における常套句かも知れないが、ソースネクスト株式会社はそれを上っ面だけでなく実践してる企業だと感じた。

本書は「ポケトーク」や「ウィルスセキュリティZERO」を開発した同社の松田憲幸社長が、創業から現在に至るまでの過程を纏めた一冊となっている。

以前にNewsPicksで著者の特集記事を拝読してたので、同社の存在や主要製品は知っていたが、改めて本書を読むと、業界は違えど同じ製造業として非常に学びが多く、刺激をもらえる内容だった

特に印象的だったのが、①販売プロセスに注力していること②原理原則を大事にしていること、の2点だ。

一般的に製造業では製品の付加価値を高めるために開発や生産といった製造プロセスに注力する企業が多いなかで、同社ではクリエイティブ機能の内製化や顧客起点のプライシングなどの販売プロセスに注力しており、新たな学びがたくさんあった。

返品ができるならたくさん注文しよう、と量販店サイドに思っていただき、店頭にたくさん並べてもらえることのほうが重要。
お客さまから選んでもらうポイントはまず中身よりも 「見た目」にある。
クリエイティブ機能を社内で持つ—つまりネーミングやパッケージデザインを「内製化」すること。
判断基準は、シンプルに「これで買いたくなるか」
売り文句は濃淡をつけつつも、複数あったほうがいい。
誰が作っているか、ではなく、きちんとお客さまに届いて、お客さまに喜んでもらえるか、ということこそ重要。
「1,980円」は、最終消費者にとって買いやすく、かつビジネスとしてもギリギリ下げられる最低限の価格。
1万円のものが1,000個売れるより、1,980円のものが1万個売れるほうが、はるかに実入りは大きい。
売り場に行くと、自分たちの姿だけでなく、競合の取り組みも丸見えになる。

そして同社は新しい手法で数多く成功しているように見えるが、実は原理原則に従い判断、行動することを大事にし、その結果が成功に繋がっている印象を強く持った。

メーカーとしては、より良いものを常に作り続ける義務がある。
みんなが嫌だな、と思っていたことを取り除くことで、高い支持につながる。
正しいことをやってお金を稼ぐことが重要。
払っているかどうかわからないようなサービスではなく、積極的に続けたくなるサービスでなければならない。
「型」がわかっているからこそ、型破りもできる。
交渉でまず大事なのは、相手のWin(メリット)を理解すること。
経営の要諦の90%以上は業界に限らず共通。

最後に本書を通じて個人的に最も響いた言葉が、文末に著者の座右の銘として書かれた以下になる。

もう一つは「親しき仲にも礼儀あり」です。
人との付き合いでは、親しくなるほど相手に無礼になりがちですが、親しい人にこそ礼儀を尽くさないといけません。
たとえば、ある人に100回ご馳走していただいたとして、毎回必ず「ありがとう」と感謝を伝え続けることができるかどうかです。1〜2回はお礼をしても、5回もすればお礼を言わなくなる人が多いのが現実です。
そして、ビジネスにおいて礼儀を尽くすということは非常に大切です。
なぜなら、ビジネスは人の力を借りなければ決して成長できないからです。
この言葉を教えてくれた両親に、感謝しています。

著者の人柄やこれまで経験が、この文面に凝縮されてる気がした。

自分自身もより一層の感謝の気持ちを持って毎日を過ごそうとマインドセットされた。

Amazonのレビュー数はまだ少ないが、満足度の高い一冊となった。

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