二十五歳 タイ
ここまで三年おきに海外へ行っていたことになる。どっか行っちまいたくなるのがそのスパンだったのだろう。
フィリピンのときとは別の友人とだが、今度はタイに行くことになった。
各種手続き、荷物の準備、情報収集なんぞやってやがて出発。フライトはやけに短かった気がする。すぐにバンコクに着いた。タクシーでカオサンロードへ向かう。
目星をつけていた安宿へ直行。マッシヴなアメリカ人がフロントでもめていた。俺らが横で宿泊のあれやこれやをやってるのを見て、ジャパニーズがどうのといっていた。だが俺はネイティヴ話者の英語はよくわからん。
夜中の到着だったのでメシ屋は期待できず、近所のコンビニで適当になんか買って宿で食った。ソーセージに青唐辛子が丸ごと一本入ってたりして驚愕。だがこんなもんは軽いジャブだった。
というのも、タイに来たらトムヤンクンいくっしょー、というノリのもと、別の日にレストランへ行って注文したそのスープ、もはやからいんじゃないんだね、痛いのね。友人は一口でギブアップ。残りは俺が全部食った。キツかったですねー。おいしいんだけども。
メシはもういろいろうまくて、中華のフカヒレスープには切り身がゴロリと入ってたり、裏路地のミスターワッタナーの10バーツラーメンなんか渋み冴え渡る熟練の味、あとパッタイという焼きそばとかうまかった。
宿は点々としたんだけども、一件のラーメンの露店に友人がハマってしまって、しばらくそこらへんにいたりした。毎朝さっぱりとしたのを食う。おばちゃんがひとりでやってる屋台で、無駄な味がないというのかね、飽きませんでした。
あとなんだろう。カオサンロード、昔はバックパッカーたちがまずここに来て、安い航空券を取って世界中に散っていくという町だったそうなのだが、俺が行った当時はなんか竹下通り的なノリというのか、アメ横っぽいというのか。沖縄でいえばあれよ、国際通り。そんな町でしたね。
だもんでおみやげなんかはガンガン買える。まだ物価が安かったときだからTシャツとかかっこいいのを買いました。未だに着てるのがありますね。ガルーダがプリントされてるのと、仏陀がプリントされてるの。暑い国のTシャツだから夏に着るとすごく快適。
ある昼、そのカオサンロードの真ん中にうつぶせになっている黒人を見かけた。周りでは人々、遠巻きにそいつを見ていて、なんやこいつ、と俺が見たらバッとこっちに顔を向けてきたんで後ずさりしました。あれなんだったんだろう。ああいうパフォーマンスなのかな。
観光もしておこうか、と話し合い、王宮を目指して出かける。途中で人の良さそうな現地の兄ちゃんに話しかけられる。王宮に行く旨を伝えると、いまスチューデントがスティックでファイティングしてるからパレスはクローズだよ、とのこと。あんまり知らなかったんだけどデモ的なもんがあったらしい。スティック? ファイティン? と俺は聞き直しながら、腰に差した空想の刀を抜いて正眼に構えるエア剣術を見せたところ、ノノノノ、ノットサムラーイ、と笑われました。サムライは有名人なんですなあ。
その後、まあ遠くから見るだけでも、といって王宮方面へ。道端では露店がいっぱいあった。ポスターとか売ってた。友人は王宮のスケッチをした。なかなかうまく描けてたぜ。
あとなんだろう。ウィッグ屋の横を通り過ぎていって、ヘイ! と呼び止められて。振り返ったら股間に金髪ロングのウィッグを当ててこっちを見てる若者、俺は大笑いしたんだけど、でもあいつ何も考えてないよな。愉快でいいけど。パーティーとかにひとり欲しい人材。
テレビでムエタイを観た。たしか日曜日、日本の大相撲的な位置づけなのか、とにかく何試合かやってて。打ち合いは思ったほどなくてけっこう地味、バキみたいなのを期待してたんだけども。友人と一缶のビールを賭けて勝った。
そんな感じでしたかね。楽しかったなぁ。
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