行動問題を起こしたらご褒美を取り上げてもいいのか?
昨日、行動障害のある方の支援に関して相談を受けました。
「これまで獲得した”ご褒美のシール”を、
大声をあげるたびに一枚ずつはがしてもよいか?」という相談です。
この利用者の方は、
重度の知的障害を伴う自閉症があり不穏状態になると大声をあげるなどの行為が見られます。
ご褒美のシールがもらえる条件としては
①洗濯物を干す
②皿洗いをする
③靴をそろえる
④大声を出さない
の『4つのルールを達成するとシールが1枚ゲットでき(逆に1つでも達成できないとシールはもらえない)シールを5枚ためると、好きなDVDを借りに行ける』
という取り組みをしています。(細かいこと言うと④は”行動ではない”ことと、”基準が明確に設定しにくい”ので、ルールとしてはあまり適切ではありません)
これまでの約束に基づくと
「大声を出したらその日はシールがゲットできない」だけであったものが
相談内容の「大声を上げるたびにシールを一枚ずつはがす」にルール変更すると
『シールがその日もらえないだけでなく、
これまで約束を果たしてゲットしたシールまでもがうばわれる』ということになります。
このルール変更、みなさんはどう思います?
相談内容に対して私の回答は
「そのルール変更は絶対やらないでください」
と伝えました。
その根拠は
①ルール変更が職員の裁量(さじ加減で)簡単に変わるものであったら、利用者はそんなルール守りたいと思わない
②一度ゲットしたシールは過去に行なった達成行動の報酬なので、過去の報酬は取り上げるべきではない
③このようなご褒美システム(トークンシステムと言ったりします)はゲーム感覚で行う方が効果がでる
の3つの理由からです。
もう少し詳しく書きます。
①ルール変更が職員の裁量(さじ加減で)簡単に変わるものであったら、利用者はそんなルール守りたいと思わない
これは共感してもらえる人が多いと思います。
私は利用者と交わすこのような約束(ルール)は、契約だと思って職員も遵守するものだと思っています。
契約は利用者・職員の双方が合意して取り組むもので一方のさじ加減でコロコロ内容やルールが変わってはいけないものです。
私たちも働いている時に、会社の都合と裁量で労働条件がコロコロ変わるようでは、そんな労働条件守りたくなくなりますし会社のことを信用できなくなり、辞めてしまうことになるはずです。
②一度ゲットしたシールは過去に行なった達成行動の報酬なので、過去の報酬は取り上げるべきではない
これも私たちが働いてお金をもらうことに例えて考えてみます。
例えば、些細なミスで「昨日働いた分の給料は没収ね」と言われたらどうでしょう?
これもまた、会社に対しての信用もやる気も失います。
それよりも、怒り爆発でもんくを言ったり、怒鳴り散らすこともあるかもしれません。
同じような場合に、利用者の人が怒鳴り散らすとと行動障害と言われてしまいますが、行動障害ではなく職員の悪どい行動に抗議しているだけです。
①②を見れば、相談内容の「これまで獲得した”ご褒美のシール”を、大声をあげるたびに一枚ずつはがすこと」へのルール変更が、職員側の勝手な都合で不適切な関わりであることが理解してもらえるのではないでしょうか。
このような行為が、行動障害を引き起こしてしまっているのです。
③このようなご褒美システム(トークンシステムと言ったりします)はゲーム感覚で行う方が効果がでる
ご褒美システムは、行動障害を減らすことを主な目的とするのではなく、短調につづく日常にちょっとした楽しみや、彩りを与えるためのものであるといいなぁと思ってます。
ちょうど私たちが「目標(ジョギングをする、寝る前の間食をしない、など)を頑張って達成した自分へのご褒美」をプレゼントするような感覚です。
なので相談のようなケースであれば、こんな提案があるけどどうしますか?やってみますか?(強制ではありません)と4つの約束を達成できたら、1日につきシールが一枚もらえます。シールが5枚たまるとDVDを1枚借りることができます。
このルールにお互いに同意してからスタートします。
達成できない日があっても、シールが一枚ゲットできないだけです。でも次の日達成できたらシールがまた一枚増えます。5枚たまったらその時は、土日でなくてもDVDを借りに行くことができます。
1日の約束を達成するごとに職員は「やったね!」と一緒に喜んで、5枚たまったら「DVD借りに行けるね!」と再び一緒に喜べば良いのです。
このゲームに叱ることは必要ありません(むしろ絶対しないほうがいい)
また、シールを行動障害を抑えるための交渉手段(大声出したらシールなしだよ)に絶対使わないでくださいと伝えてます。
*このケースでは、特定の職員の時だけ大声を上げる行為があるようでした。その特定の職員の支援方法がや関わる姿勢(態度)が他の職員に比べてどうなのか?そこを検証する必要があると結論付けました。
まとめ
ご褒美システムは利用者との契約である→ルールを勝手に変更しない(変更する場合は合意をとること+利用者の不利益にならないこと)。過去に獲得済した報酬は取り上げてはならない。ご褒美システムはゲーム感覚で行う。以上のことが大切です。
*偉そうに書きましたが、自分の子育てに関しては守れていない部分が結構あります。ごめんなさい…^^;
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。