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利用者の方のパニック時に行う身体拘束は虐待にあたるのか?

強度行動障害といわれる方の支援をしているとパニック(近年は”行動問題”と表現することが多いです)と言われる状況への対応を迫られることがあります。

パニックをもう少し具体的に表現すると

◎利用者の方( Aさん)が、他の人(Bさん)を叩こうとするとき

◎ Aさんが、ガラスを割ろうとするなど、物を壊そうとするとき

◎ Aさんが、壁に頭突きなどをして自分を傷つけようとするとき

なとをパニックと表します。

このような状況でスタッフが身体を張って止めようとして、 Aさんの身体を押さえることは虐待にあたるのか?というのが今回のテーマです。

▼身体拘束は原則認められない

スリーロックという言葉をご存知でしょうか?

身体拘束は大きく分けて3つの種類(スリーロック)があります。

一つ目が『スピーチロック』と言って、支援者による“言葉での拘束”です。「立たないで!」「座ってて!」「そこから動かないで!」など、言葉によって相手の動きを制限する行為をさします。

二つ目が『ドラックロック』と言って、“過剰な投薬”により利用者の動きを制限する行為をさします。

三つ目が『フィジカルロック』と言って、支援者が利用者の身体を物理的に拘束することをさします。

今回の記事のは三つ目のフィジカルロックのケースの話しになります。

中見出しにも書きましたが、これらの身体拘束は原則認められません。しかし、そんなことを言っては、本人も含め、けが人が出てしまう可能性がある場合にはどうするの?と言うこえが聞こえてきそうです。

そこで次の3つの原則を全て満たす場合のみ、やむを得ず身体拘束を行うことが認められる場合があります。

▼やむを得ず身体拘束を行う場合の3要件

切迫性
(緊急事態であること)
例〕Aさんが今にも他の利用者の方へ飛びかかりそう

非代替性
(他に手段がないこと)
例〕支援者が間に入って Aさんを押さえる以外に方法がない

一時性
(一時的であること)
 例〕Aさんを押さえているのは、 AさんがBさんに飛びかかるリスクが収まるまでの時間であること。クールダウン目的で別室に行く場合にも外から鍵を掛けて出られないようにすることはNGです。

この“3つの要件を全て満たす場合のみ“やむを得ず身体拘束を行うことが認められます。

身体拘束はやむを得ず例外的に行うものなので、1人の職員の判断で行っていいものではありません。

身体拘束を行う可能性がある利用者の方に対しては、管理者・サービス管理責任者を中心に組織全体で検討したうえで、起こり得る場面を想定し、

①個別支援計画への記載②利用者・家族への説明を行い同意を得る③やむを得ず身体拘束を行った場合はその記録を取ることが求められています。

▼3要件を満たせば身体拘束は虐待にはあたらないのか?

3要件を満たしても、利用者の方のパニックを予防するための知識を学ぼうとせず、毎回変わらない支援でパニックを誘発しているのであれば、それは差別であり、権利侵害にあたる可能性もあることは心に留めておきたいですね。

利用者の方のパニックは二次障害です。1番困っているのは本人です。

大切なのは、本人がパニックにならずに過ごせる環境(支援者の関わりも含めます)をつくることであって、身体拘束は最後の手段であることに気をつけたいですね。

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