接遇の基本概念について考える
こんにちは。ホワイトボックス(株)コンサルティング部の阿部です。
医療はサービス業といわれることがあります。医療機関によっては、接遇委員会やサービス向上委員会のような委員会が組成されることもあると思います。しかし、本当に医療はサービス業でしょうか。分類上はサービス業にあるとしても、医療サービスがホテルなどのサービスとは異なることは広く理解されるところでしょう。
先日、今年99歳を迎える祖母の血圧が200を超え、立つことができなくなったというので、近くの病院に救急搬送されたことを母から聞かされました。幸い大事なく点滴を打っただけで帰宅となったそうですが、医師からはなんの説明もなく、また対応にあたっていた看護師2人は患者に言葉をかけることがないどころか、扱う力が強かったのか、帰宅した祖母の左手の一部が青く内出血していたそうです。
このような例は行き過ぎた残念な例だとしても、似たような経験を持つ人は少なくないと思われます。
話しを戻します。病院におけるサービスを考えた場合、ホテルフィーのような要素や食事の提供はあるとしても、“医療”を提供するということで病院は成り立ち、患者さんは“治療”を受けるために来院しています。医療における接遇という点において、笑顔や礼節、挨拶といったことは当然のこととして、最適な治療のために「医療の質を上げていく」ことが本来の医療に求められている接遇だと理解しています。
前出の例でいえばサービス提供者側に余裕がないことが推し量れますが、体力的な問題や技術・知識的問題、あるいは働くことに対する対価の問題などいくつかの要素が絡みあった結果、提供者側の「質」が下がってしまったのだと思います。
医療者個人のレベルでみれば、まず自らの思いという根っこのうえに技能技術を身につけ、自信をもって医療サービスを提供できるという太い幹を基盤に、笑顔、挨拶、礼節という枝の部分が人の目に映える。こんなところが、本来の接遇のイメージでしょうか。
ただ、いくら表面的にこれらが発揮できたとしても、患者さんへ提供する医療サービスの根幹がおぼつかなければ、それは時にクレームに姿を変えることは想像に難くありません。
医療サービスの提供において、患者さんに
「痛みを与えない」
「恐怖心を与えない」
「羞恥心を与えない」
「不快な思いをさせない」
「不便を与えない」
「不利益を与えない」
「納得してもらう」
という7つの接遇の基本概念を念頭に、これを前提に自分がどう医療サービスに関与し、役割を果たしていくことができるのか、考え行動していくことが求められているのだと思っています。
2022.05.04 阿部 勇司