「いくよ、フィナーレへ」セクサリス・サーガ完結記念、少女病特集vol. 6(unleash〜深閑セグレート編)
・unleash
メジャー3枚目のシングル。ゲームタイアップ作品でもある。セクサリスサーガと直接関係があるのは3曲目のみになる。3曲中3曲がアップテンポという超攻撃的布陣を敷いている。
ジャケットの雰囲気に反して全体的にピアノの重要度が高い作品であり、アップテンポナンバーが続く中ピアノの旋律が全体を締めている。
ゲームタイアップ作品ということで物語の比重は落ちているが、作品そのものの雰囲気は極めてよく、初心者にオススメしやすい作品。
・創傷クロスライン
同人6枚目のアルバム。先日の少女病ラストライブにおいて、新譜でもないのにこのアルバムの曲が3曲披露された。この事実だけでも作品の強さは証明されている。筆者自身も「物語音楽のアルバムで1番強いアルバムは?」と訊かれたらこの作品か「真典セクサリス」かサンホラの「moira」あたりを答える。
非常に強力なアルバムであることに否定の余地はないが、物語方面では前提知識として「残響レギオン」「慟哭ルクセイン」「聖骸メロフォビア」が要求されるなどあまり初心者にオススメできるタイプの作品ではない。端的に大筋の物語を説明するなら少女病版昼メロだ。
演技周りを声優にある程度任せ、歌唱側は第三者視点に徹している珍しい作品でもある。登場人物がシリーズ通してもかなり多い作品なので試み自体はフィットしている。
どちらかというとアップテンポな曲よりはしっとりと歌いあげている曲の方が多い。ただアップテンポ曲がかなり強く、現にライブで披露された3曲は全てアップテンポ曲だ。
導入曲「Resistance」は混沌とした曲が多い少女病の導入曲のなかでは珍しく透明感のある旋律となっており、2曲目「フェザースノウ」へ上手く繋げている。
2曲目「フェザースノウ」及び3曲目「眠り姫と夢の空想儀」は2人のヒロインの状況説明曲である。特に3曲目はアップテンポ曲ではないが、ヒロイン自体の決意の曲でもあり、とても重厚感ある曲に仕上がっている。
4曲目「初恋リセット」は状況が特殊だが「Celestial blue」以来のバチバチの恋愛曲だ。こちらは第三者視点で物語を雄弁に語っている印象が強い。
5曲目「浮遊黒猫と楽団装置」は4曲目と曲調、ストーリー的にも対比がすごい。ルクス再登場でクロスライン要素はここで回収する。
6曲目「運命性トライアングル」は邂逅曲にして再会曲。4曲目と5曲目を足して2で割らない感じの属性盛り盛り曲だ。珍しく難しい言葉を使わず言葉の反復で語呂を合わせるなど結構少女病の中でも特殊な部類に入る。セリフの量こそ構築上少ないが全て強い。
7曲目「運命旋律の共鳴する丘」はフラン(アナスタシア)とルクスの再会を描いた曲であるが、曲の雰囲気は完全にルクス曲だ。ルクス曲に共通して言えるが良い意味でアニメのOPっぽい。「この罪は五つの穢れた残骸と共に」とかいう歌詞は少女病のサビ終わりの歌詞としては語呂・使っている状況・音の響き全てとってもトップクラスだと思われる。
8曲目「感情ロストライン」は、昼メロ開催曲になる。曲名、曲の出だしのストリングス・コーラス・語りから少女病史上最厄レベルの悲壮感が漂っている。曲内で音楽的に4通りぐらいの悲壮感を味わえるほんとにヤバイ曲。不安定な事によって安定している。正直ここまで聴いてて「まだ一曲残ってるのか…」となるのは間違いない。
9曲目「廃園イデア」は……
よ う こ そ 、物 語 音 楽 の 極 北 へ
セクサリスサーガ上最悪にして最凶のカーテンコールナンバー。曲の出だしで救いがありそうな旋律が鳴っているのが極めてタチが悪い。語呂が全体的に良すぎて闇堕ちしたサザンオールスターズ状態だ。歌詞が遠回しだがもう絶望しか存在していない。それどころか闇が深すぎて他のアルバムをこの曲で1つバッドエンドにしれっと塗り変えている。
普通に考えてそんなことを聴衆が許す訳がないが、「さあ罪悪の庭で患者の群れと踊り続けよう」という歌詞の通り、聴衆はこの曲の圧倒的力の前に、もはや踊るしかない。
8曲目までは曲間の連携が強力であり、一曲一曲の力というよりは作品全体の完成度が高い。9曲目で良い意味で全てを破壊した印象。前述の前提知識を会得したら間違いなく聴きたい作品。
・深閑セグレート
慟哭ルクセインからかなりスパンが空いて、同人4枚目のシングル。黎明ローレライの「meaning of death」から着想を得た作品になる。ひたすら弦楽器が強い。ボーカルより弦楽器を聴かせるための構成が徹底されている。
1曲目「退廃を撃ち落として」はタイトルを全く回収していないしする気がない。極めて退廃的だ(誉め言葉)。題材が兄妹間の近親相○の割にはアニメのOP面をしながら下品さがないという、あらゆる意味で少女病にしかできない芸当を行なっている。
2曲目「レーゾンデートル・コンフリクト」は少女の心境の変化や破滅等を重点的に描いて来たセクサリスサーガの中でも随一の描写力が行使されている少女の破滅を描いた曲。残響レギオンの「recollection」で同じような構成の曲はやったが、音楽的なパワーが違う。弦楽器を聴かせるというところに重点を置きながらも、高い物語性を維持する事に成功している。
3曲目「conjunction」は、ゆっくりとしたテンポから徐々にボルテージを上げていくタイプの曲であり、やはり弦楽器を聴かせる為の構成を貫いている。シングルの幕引き曲としては随一の安定感を誇る。
全体的に作品の題材に反して安定感のある作りとなっている。題材の異色さに目を瞑れば、他作品との繋がりも薄いのでオススメしやすい。