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「伝える」ことと「伝わる」こと

専門誌やビジネスサイト、弊社が主催するブランディングクラブの会報など、原稿のための取材が多い仕事です。取材相手の多くは経営者です。どなたも他にない経営観をお持ちになり、独自の経営をされています。

もちろん、事前に下調べは念入りにしているつもりなのですが、なかなか想定した通りにはいきません(それがおもしろいんだけど)。取材のプロではないので、相手の考えを引き出すことの難しさを実感するばかりです。

そんななかで感じるのは「伝えよう」と話す方と、「伝わるように」と話す方がいることです。取材の未熟さは棚にあげてですが、取材をしていて気持ちの揺さぶられ方が違います(先日もしびれるような取材がありました)。

ベテラン通訳と初心者通訳の仕事の結果

以前どこかで「二人の通訳」の話を聞いたことがあります。一人はベテラン通訳で、相手の言葉を的確に通訳することが出来ます。もう一人は、まだ初心者ですので、まだ言葉に詰まりながらの通訳です。

この二人がある商談を担当することになりました。最初はベテラン通訳が担当しました。精密機械のように完璧に近い通訳でしたが、残念ながら商談はまとまりませんでした。二度目は初心者の通訳が担当しました。

彼女は通訳のレベルはベテランにははるかに及びません。しかし、何としても商談をまとめたいという気持ちは人一倍強かったのです。一生懸命に通訳をするうちに相手もひき込まれ、結果的には商談はまとまりました。

伝えているつもりでも、伝わっていない事実

通訳のエピソードから学ぶことは「伝える」と「伝わる」は違うということです。「伝える」は、発信した情報を受け手が受け止めただけの状態です。情報が届いているだけで、気持ちが揺さぶられることはありません。

一方の「伝わる」とは、伝え手と受け手の間に、情報のやりとりを通じて、何かしらの関係が出来上がり、共感が生まれる状態です。さらに言えば、受け手が行動を起こそうと思うのが、本当に伝わったということです。

どんなに正確に、あるいは数多く伝えても、相手に伝わらなければ意味がありません。伝わった気になっているだけです。「伝わらなければゼロ、存在しないのといっしょです」・・・自戒を込めてそう思います。

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