不確実性の時代を乗り切るシナリオは、「ミッション経営」です
不確実性の時代とは「未来がわからない状態」のことです
価値観の多様化や急速なデジタル技術の進化などを背景として、社会全体の「不確実性」が増大しています。不確実性を一言でいえば「未来がわからない状態」のことです。この先行きの見えない状況は、経営者のさまざまな場面の意思決定において迷いを生じさせます。
例えば、新型コロナウイルスの感染拡大を予測できた人はほぼいません。ロシアのウクライナ侵攻も同様です。インフレや物価の値上がりもどこまで続くか見当がつきません。先日起きたKDDIの通信障害も突然発生し、大きな混乱を引き起こしました。まさに見当がつかない予測不能な時代です。
中小企業の経営者はこの不確実性の高い時代とどのように向き合ったよいのでしょうか。あるいは、良い意味で変化をもたらす呼び水にすることはできないのでしょうか。予測不能であっても、経営の判断は待ってはくれません。時流対応とは異なる新しい判断基準が求められているように感じます。
顧客の求めるものを追いかけることが難しくなってきています
いつの時代においても「顧客の支持を得る」ことが経営を安定化させる道です。しかし、不確実性の時代においては、「昨日の正解が今日も正解である」という保証はありません。つまり、これまでの成功体験だけでは、顧客の支持を得ることが難しくなってきています。
そもそも、価値観が多様化したいま、顧客の求めるものを追いかけて、顧客の支持を得ることが本当に適切な方法でしょうか。顧客のニーズを追いかけるのではなく、自分たちが実現したいものを掲げ、その実現を目指す過程で、支持や共感を生み出すことは顧客を無視した傲慢な考えでしょうか。
人は熱量の高い人に惹きつけられます。熱量の高い人は「自分はこういうことしたい」と語り、すぐに行動します。情報も次々と発信するので、おもしろがって人が集まってきます。なかにはいっしょにやりたいという人も現れます。いつの間にかファンのコミュニティが生まれてきます。
「ミッション経営」は高収益の経営体質を生み出します
さて、ここからが本題。僕が代表を務めるクエストリーは、不確実性の時代を乗り切るシナリオは「「ミッション経営」と考えます。ミッションとは何か。直訳は「任務・使命」ですが、これでは経営上の解釈としては不十分です。しかも「ミッション+経営」を組み合わせているのですから尚更です。
ミッションを「選ばれる理由」と解釈したらどうなるのか。先ほど経営を安定化には顧客の支持が不可欠と述べました。一人の熱量からファンが生まれるとも書きました。自分都合で支持されようとしてもすぐに底が割れてしまいます。熱量の向かう先が、世の中の幸せであることが選ばれる理由です。
ミッションには4つの構成要素があります。自社の「存在理由」「立ち位置」「社会貢献」「判断基準」です。この4つの明確化は、経営者の心を奮い立たせ、社内のベクトルを一つに揃えます。経営資源を無駄なく集中化させ、顧客の支持を集めます。そして、高収益の経営体質を生み出します。
経営者の熱量で、社員とお客さまの想いに火をつける
食べるスープの専門店「Soup Stock Tokyo」、セレクトリサイクルショップ「PASS THE BATON」、ファミリーレストラン「100本のスプーン」など多数のブランドを展開している株式会社スマイルズという会社があります。同社の経営理念は「世の中の体温を上げる」です。
同社の取締役クリエイティブ本部・本部長の野崎亙氏はあるインタビューで、「『世の中の体温を上げる』という理念に沿っていれば、どのようなジャンルでも挑戦するのがスマイルズの方針です」と語っています。事実、スマイルズが立ち上げたさまざまな事業はこの理念とつながっています。
どんなに混沌とした時代であっても、ミッションを構成する「存在理由」「立ち位置」「社会貢献」「判断基準」の4つが明確になっていれば、まずは社員、そして目指すべきお客さまの想いに火をつけることができます。ただし、それを実現する条件は経営者の想いの熱量が誰よりも高いことです。