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久しぶりに、私立探偵『スペンサーシリーズ』の一冊を読む

ロバート・B・パーカーという小説家がいた。1973年、私立探偵スペンサーを主人公としたハードボイルド小説『ゴッドウルフの行方』でデビューし、以来40作の『スペンサーシリーズ』などを世に送り出した作家だ。

20作ほどまでは愛読したが、次第に読まなくなった。作品にマンネリ感を覚えたこともあるが、ビジネス書を読むことの方が多くなった。パーカーが2007年に77歳で急死したときも、再び開こうとは思わなかった。

ところが、先日、図書館でスペンサーシリーズに目が止まり、38作目の『プロフェッショナル』を借りてきた。その日のうちに読み始め、一気に読み切った。ストーリーのおもしろさもあるが、ウィットに富んだ語り口が良い。

こんな感じだ・・「ほとんど私が料理したものだが、この朝は少し違っていた。スーザン(スペンサーの恋人)がスクランブルエッグを作ったのだ。これはふたつある彼女の特別料理のひとつで、もうひとつは湯沸かしだ」。

読み進むうちに、料理のシーンが好きだったことを思い出した。本書にも、全粒粉のパンケーキやホタテのセピチェ(魚介類のマリネ)、ローストした鴨、ビールのサム・アダムス・ウィンター・エールなどが登場する。

どれも家庭料理の域を出ないが、読んでいると唾が出て、喉が渇く。シリーズに登場する料理をレシピ付きで解説した『スペンサーの料理』という本もあったはずだ。書棚を探したが、残念ながら処分したようだ。

残念といえば装丁だ。いつから変わったのかわからないが、辰巳四郎さんのイラストによるカバーデザインが好きだった。処分したことがちょっと悔やまれる。本作はタイトルのせいもあるがビジネス書のようなデザインだ。

それにしても初期の作品と比べると、足を使った調査が増え、スペンサーは随分とおとなしくなったように感じられた。相棒役のホークも本作では終始穏やかだ。パーカーの晩年の作品ということもあるのかもしれないなあ。

こちらにも本のことを書いています


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