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変化の時代のコンパスは「ミッション」です
「Compasses over Maps:地図よりもコンパス」という考え方
いまだ収束の見えないコロナ感染症、長引くロシアのウクライナ侵攻、世界で起きているインフレ、諸物価の急速な値上げ・・・激しく変化するさまざまな社会の事象に対して、僕たちはどう対応したらよいのでしょうか。
MIT メディア・ラボの所長だった伊藤穰一氏は、著書『9プリンシプルズ: 加速する未来で勝ち残るために』のなかで、「Compasses over Maps:地図よりもコンパス」ということを述べています(翻訳がよくないのが残念)。
意味するところは、「変化のスピードの早いいまは、行き先を示す地図がすぐに劣化し、役に立たなくなる。地図がないと動けない人よりも、コンパスを手に自ら動ける人の方が目指す場所にたどり着ける」と解釈できます。
楽に慣れてしまうと、やりなれた方法を捨てられなくなります
多くの方が「地図よりもコンパス」を引用されているので、それぞれの解釈があります。大事なのは「コンパスとは何か」「それを持つ意味は何か」・・・これを自分なりに理解し、実践できるかどうかだと思います。
ある取引先からは「コンパスも大事だが、組織には地図もいる」という意見が出ました。確かに多くの人と目的地に向かうには、コンパスよりも地図の方が便利です。ただし、現状に即した地図でなければ全員が迷うだけです。
誰かが作った古い地図が正しい情報を提供してくれるとは限りません。常に北を指すコンパスは、正しく使えば現時点での有効で正確な情報を提示してくれます。コンパスを使いこなせる人とチームがづくり急務です。
誰かが作った古い地図では正しく有効な情報は手に入りません
「古い地図など使っていない」という意見もあります。本当にそうでしょうか。人はやりなれた方法を簡単には捨てられません。最初は違和感を感じた新人もいつの間にか慣れてしまいます。なぜならばその方が楽だからです。
「新しいやり方に取り組む余裕がない」という声もよく聞きます。しかし、よく見ると、古いやり方が余裕を奪っているケースが多いのです。「余裕が生まれない状況を自らつくっている」といってもいいかもしれません。
短期的に見れば、従来の方法でもなんとかやり切れます。というよりも課題解決にならないとわかっていても、やりやすいから目をつむっていることが多いのです。やがて課題は肥大化し、経営を揺るがすかもしれません。
自社のミッションと現状の事業展開のズレをチェックする
変化の時代における経営のコンパス何でしょうか?それは「ミッション」です。「自分たちの在りたい姿や価値観」を成文化したものがミッションです。これが正しい方向を示すコンパスとなり、向かうべき場所に導きます。
しかし、ミッションが確立されていても業績が悪くなるとミッションを置き去りにして数字を追いかけたくなります。一時的なカンフル剤は長続きはしません。ミッションと事業展開のズレの修正に着手した方が早道です。
「そもそもウチにはミッションがない」。正解はありません。どういう形でもいいのでミッションを確立しましょう。確立に動き出すだけでも、経営に対する見方が変わってきます。これは取り組んだ人しかわからないよなあ。