競合他社に模倣を諦めさせ、差別化を無効化するシナリオ
競争的優位性はビジネスの重要な条件なのですが・・・
「差別化」はブランディングの重要な課題です。しかし、この差別化の意味が変わってきているのを感じます。差別化の定義は「複数のものを比較して優劣をつけること」、差別化には差別化したい対象がいるわけです。
多くの経営者は、競合他社に対して競争的優位性を持つことが市場で生き残る条件と思っています。他社にはなく、自社にはある強みを活かすことに熱心です。競争相手に勝つことで顧客満足度も向上すると信じて疑いません。
しかし、差別化された相手も指をくわえてはいません。差別化されたものはすぐに模倣されます。模倣されることで、差別化の材料にはならず、強みは無効化されます。この繰り返しは際限のない同質化競争につながります。
差別化してもすぐに模倣され、無効化される現実
同質化競争下での差別化は消耗戦です。この不毛な競争は、作り手、選び手、届け手の利益を圧迫し、市場を疲弊させます。しかも、競争相手ばかりを見続けることで、大事なお客さまを置き去りにした戦いになりがちです。
そもそもお客さまは差別化をそれほど認識していません。「あそこよりも美味しい」「あそこよりもこだわっている」などと他社と比較しているのではありません。個人の好みやその時の環境によって受け止め方は変わります。
つまり、競合他社との差別化は必ずしもお客さまの「選ぶ理由」にはならないのです。差別化は価値を追求した結果に過ぎません。自社の提供価値が、競合他社よりも喜ばれなければ選ばれないだけのことです。
競争の少ない、あるいは競争のない立ち位置づくり
他社がやっていないことはたくさんあります。しかし、そのほとんどはお客さまが求めていないからやらないだけです。大事なのは、お客さまが求めるもので、競合他社がやっていないこと、できないことに取り組むことです。
そのためにはお客さまにとことん寄り添い、どうしたら喜んでもらえるかを考え、実行することです。しかし、実行したことは、すぐに模倣され、無効化する可能性があります。結果的には、再び同質化競争に陥ります。
この不毛な同質化競争から抜け出すには二つの道があります。一つは競争の少ない、あるいは競争のない立ち位置を見つけることです。しかし、現実は簡単には見つかりません。あったとしても市場性が低いのです。
手間暇をかけ、相手が躊躇するほどの差別化を図る
もう一つの道は、競合他社に模倣を諦めさせ、無効化を阻止することです。つまり「これほどまではやれない」と、相手が躊躇するほどの差別化です。これもまた簡単ではありません。しかし、好きなことならどうでしょうか。
ある騎手の言葉です。「努力している人間に勝つことは可能。努力の量で勝負できるからだ。しかし、楽しんで努力している人間には一生かかってもかなわない」、好きならば、手間をかけることを、手間だとは思いません。
「他との違いを出す」ことよりも、「本当にやりたいことを徹底的に深掘りをする」「お客さまに喜んでいただけるように徹底的に手をかける」・・・これが同質化競争から抜け出す現実的なシナリオです。
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