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写真を始めたきっかけの話【後編】

前編から引き続き、写真を始めたきっかけについて書き書き連ねていきたいと思っております。

クールダウンが終わり、夕方の釧路の道を監督が運転した。
2人きりで乗るハイエース、2人きりなのに僕はいつものクセで後部座席に座っていた。

あまり気持ちの浮き沈みの少ない監督が、なんだかその日は妙に上機嫌だ。
「あの走りができたのは自信持っていい」
「〇〇大の推薦を受けるなら、早く言ってくれよ」と、よっぽど今大会の僕の成績を嬉しく思ってくれたのか、普段は無口な監督がどんどん話しかけてきてくれた。

さらに、「飯食ったらちょっとドライブ行くか」と。
監督とここまで話せたことは中々なかったから、僕も素直に嬉しかった。

街の方に戻り、釧路名物"スパカツ"を食べ終わった後、監督と少し田舎の道までドライブした。何もない草原に辿り着き、ハイエースを降りた瞬間、僕はその光景に目を丸くした。

そこには辺り一面、満点の星空が広がっていた。釧路に住む住民なら当たり前の光景なんだろうだが、生まれ育った札幌ではひとつふたつの星が見えるのがやっとで、こんなにも数えきれない星屑が見える夜空に衝撃を受けた。
早くカメラで撮ってTwitterにでも流そうかと、急いでポケットからスマホを取り出す。
しかし、何度シャッターを押してもピントは合わず、ノイズが入り、目で見た通りの写真を撮ることはできない。

その様子を見た監督が少し笑いながら、
「携帯じゃ無理に決まってるだろ。こういうのは一眼レフカメラとかじゃないと」と一言。

"一眼レフカメラ=高いカメラ"程度の認識しかなかった僕は、やっぱり良いカメラじゃないと見た通りの写真を撮ることはできないのかと少し落胆した。Twitterに載せれないじゃん、と。

そしてこのとき、どうしてもこの景色を写真にしてみたい、忘れないでおきたいと強く感じた。

時間にして約15分の寄り道感覚で立ち寄った草原だったのに、この日大会があったっけ、と思う程長い1日であり、充実した1日になった気がした。

ただその充実とは、星空が見れたことだけではない。そもそもきっと、この日大会で良い結果を出せていなかったら、たとえ監督がドライブに連れてってくれたとしても星空は綺麗に映らなかっただろうし、帰りに食べたスパカツも大して美味しくなかったと思うからだ。
だから結論、あの日陸上を頑張れて良かったということなんだろう。

僕がカメラを始めたきっかけは、監督の一言から、"自分の一眼レフカメラで自分が見た通りの釧路の星空を撮りたい"と思ったことからだ。

その後前編の冒頭で書いた通り、高校を卒業する直前、2ヶ月間の短期アルバイトを経て念願の一眼レフを手に入れるわけだが、きっかけとはいつも不思議なものだと思う。
監督は別に僕に一眼レフカメラを勧めたわけではないし、そんな会話もとっくに忘れているだろう。それでもなんとなく言われた言葉を受け取り、なんとなく自分の直感に任せてみた結果、いまやカメラは趣味として僕の生活を豊かにしてる存在になった。
予定通りにいかないことばかりの中に、思いもしない"きっかけ"が混ざっているかもしれない。
きっとそれは毎日無数に転がってるんだろうが、それに全て気付けるほど敏感ではないから、例えば100個のきっかけが転がってたら1個は確実に拾える触覚があれば十分なのかもしれない。
そんなことを考えていると、1日1日が愛おしくなり、どんな日でももう少し丁寧に生きてみようと思えた。

たまたま高校時代のある日のきっかけが与えてくれた最高のおもちゃを、これからも自分なりに遊び尽くしてやろうかと考えている。

以上がカメラを始めたきっかけの話になります。次回はカメラを買った直後の話をしてみます。

ここまで読んで頂きまして、どうもありがとうございました(^^)

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