400字映画感想「OVER DRIVE」
初出: zoomトークショー「相田冬二、映画を語る」に参加した際、私が提出した課題感想文です。 2020/06
本作は104分のその先に、地平線が続いて見える作品だ。
チームは実在し、俳優たちとは別人の檜山兄弟は今日も活躍している。なそんな錯覚を与えるのはテレビ番組風の演出だけではない。
首都高を封鎖した架空のラリーをもリアルにさせたのは、俳優らの存在感だ。
真剣佑演じる直純は派手に振舞いながらも、不安定な心を抱え、痛々しい面持ちを見せる。完璧な人間ではない、その陰の演技が人格に厚みを加えた。
東出演じる篤洋は安定志向で職人気質であり、華やかな役柄ではない。しかし、その地味さは屋台骨として、物語ひいては直純を支える存在感となった。朴訥で実直な人格は、絵空事に終わらせない説得力を物語に与えた。
本作中では彼ら兄弟の他にも要素の対比が目立つ。
描いた夢と、違った現実。
高揚と落胆、そして最後にまた高揚。
鑑賞中はまるでサウナと水風呂だ。
情緒の血流は促進され、感情の新陳代謝も促される。
OVER DRIVEは健康によいのだ。
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