アカデミー賞雑感
最近は映画館にまったく行けていないのですが、アメリカのアカデミー賞は気になります。密かに応援していたのは『ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ』だったのですが……。アレクサンダー・ペイン監督のファンなので。ジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』やブルース・ダン主演の『ネブラスカ』など、地味で淡々としているけど、琴線に触れる映画を撮る方なんですよね。といっても、今回は監督賞ノミネートはならず、作品賞だけのノミネートだけだったので、次回両方ノミネートの上でW受賞してほしいです。
今回、作品賞&監督賞を受賞したクリストファー・ノーランも好きな監督の一人です。正直、出世作の『メメント』か『ダークナイト』で監督賞を取るべきだったと思うので、遅すぎた受賞ですよね。個人的には弟のジョナサンと組んでいた頃の作品がより好きですが、出来不出来の波が少ない監督なので、『オッペンハイマー』もかなりの秀作なのでしょう(日本人としてどう思うかはまた別の話)。
ノーラン監督作については過去2本記事を書いていますので、よろしければご覧になってみて下さい。記事にもありますが、おすすめは『メメント』『ダークナイト』『インセプション』です。
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ノーラン監督は、同じ俳優を何度も登用することで有名です。渡辺謙さんが『バットマン・ビギンズ』と『インセプション』に出演しているように。今回『オッペンハイマー』の演技で主演男優賞を受賞したキリアン・マーフィーも、『バットマン・ビギンズ』で悪役を演じて以来、ノーランの作品にいくつか出演しています。
キリアンの初期の出演作で有名なのは、ゾンビ映画の『28日後…』でしょうか。『真珠の耳飾りの少女』でのスカーレット・ヨハンソンの相手役も印象に残っています。
コメディー映画では『プルートで朝食を』がお気に入りです。もしかしたら今の価値観では批判されてしまう映画かもしれませんが(内容ではなく、配役的に)ハートフルな佳作でした。
芸術映画では『麦の穂をゆらす風』。カンヌでパルム・ドールを受賞したケン・ローチ監督作です。2006年にこの映画がパルム・ドールをとった時、日本でも「今更ケン・ローチ? 時代遅れじゃない?」と批判する人たちがいましたが、時代遅れどころか、今ウクライナやパレスチナで起きていることを予言した映画になってしまいました。遠くの他人ではなく、隣り合わせで生活する人たちが戦わなければならない悲劇を描く作品です。
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今回のアカデミー賞で演技の賞を受賞した女性二人、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフは出演作を観たことがなく、エマ・ストーンは今が旬の女優なので、出演作を挙げるまでもないでしょう。
助演男優賞を受賞したロバート・ダウニー・Jrは芸歴の長い俳優ですが、若い頃の作品はよく知りません。初めてリアタイで観たのはドラマ『アリー my love』だったと思います。主人公・アリーの彼氏役で非常にはまり役だったのですが、コカイン所持で逮捕。アリーといい関係だったのに、出張だったかに行ったまま戻らないという話になってしまいました。先に逮捕のニュースを聴いていても呆然としたので、アメリカの人たちはショックだったでしょうね。
その時の印象が強すぎたので、マーベルの『アイアンマン』で主人公を演じると知った時は驚きましたが、すさまじい役作りだという話を伝え聞き、映画館に観に行きました。なんだかんだ言いながら今もマーベル映画を欠かさず観てしまうのは、ロバートが築いたあの世界が好きだからだと思います。『アイアンマン』のような主演作もいいですが、『グッドナイト&グッドラック』や『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』での助演も忘れがたいです。
今回のアカデミー賞、『オッペンハイマー』はまだ公開前ですし、その後も観る気になるかどうかわかりませんが、脚本賞を受賞した『落下の解剖学』と脚色賞の『アメリカン・フィクション』は絶対観たいです(『アメリカン・フィクション』はもうアマプラにあるのか!)。作品の幅が広く、自分に合う映画が必ず見つかるのがアカデミー賞の良いところです。お気に入りの映画と出会えますように。
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