蒼い世界が苦手な理由
モロッコのシャウエンという場所には、蒼い世界があるそうです。
街中の建物が青で染められた街、その景観は死ぬまでに誰もが見たいと評されるほどに美しく幻想的な佇まい。
知的 冷静 静寂 そんなイメージを持つ青ですが、日本では比較的良い意味で使われる場面も多いようです。翡翠、瑠璃、燐光、鬼火、青にまつわる音の響きの美しい言葉も昔から多く作られてきました。
青が苦手というのは、実際は怖いという方が適切かもしれません。
昔、『青の炎』という本にハマったことがありました。その中で、印象的に描かれる幾つかの青。冷静な主人公が燃やし続ける復讐の青い炎。海際の街にする主人公が、復讐を終えたのちに自転車の舵を大きく右へ切り、トラックへ突っ込む時にもいつも通りそこにある、ロードレース沿いのおだやかな青い海。
もう一つ覚えているのは、『某国のイージス』という本に登場する青でした。
絵の才能に恵まれた青年が描く、静かな真夜中の海の青。青というより漆黒に近い海を想像してすくんでしまうのは、自分の中にも主人公と同じように時折黒いうねりに落ちていく瞬間があることを自覚していたからでした。
引き込まれる2つの青、どこか物寂しさや怖さを覚えながらも、この色に強く惹かれる自分に気がついてから数年間が経て、一つの『青から距離を置いてしまう』という現象を一歩引いて考察してみた時、その答えは自分の中にありました。
深く深くどこまでも落ちていきたくなる美しさ。全てを受け入れてくれるような茫々たる静寂の空間。
自分がなぜそう感じるのか、一つの事象に注目して内観してみると 自分の中にそう考えるようになった理由を見つけることができます。
『自分らしさがわからない』『自分がどんな人間が知りたい』
そんな時、自分の心が揺さぶられる何かを深く掘り下げてみることで見つかる、『私が大切にしている価値』が、誰にもたくさんあるのかもしれません。
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