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お互い様

過去にもnoteに投稿したように、僕は休みの日にbarに行き、普段の生活では出会えないような人との出会いを楽しみにしている。

その日は、どこかの人材派遣会社の社長が僕に話しかけてきた。

50歳前後のオシャレな見た目で、仕事もできるが遊び心も忘れない、そんな印象だった。

社長は、酔っ払って自分の話がしたかったらしく、ひたすら聞いていた。

自分がどれだけ頑張ってきたかを語れば「すごい頑張ってこられたんですね。」と合いの手をいれ、

世界各国に出張にいくと聞けば、「色々な国に行けてうらやましい。」も合いの手をいれる。

経営者としての孤独を語れば、「誰にも見せずにご苦労されたんですね」と合いの手をいれ、

女性にモテる話をし始めたら「大人の色気がありますものね」と合いの手をいれる。


社長は大変気分よく色々なエピソードを語られた。

今年1年色々な人の話を聞いていて、黙って聞くタイミング、相手が欲しい言葉を欲しいタイミングでコメントし、合いの手を入れるタイミングがわかってきた僕にとってはお手のもの状態で、心地よい会話で盛り上がりを見せる。


僕は社長の話を聞くうちに、ふと浮かぶことがあった。

「あなたにとっての仕事でもなく、女でもなく、酒でもない、何か自分にとっての落ち着く時間はどんな時ですか?」


社長はふと考えて出した答えが意外だった。

 
「洗濯機を回して、汚れ物がきれいになっていく様子を見続ける時間が一番落ち着く。」


ここが掘り出す瞬間だと思ったぼくは、洗濯のエピソードを聞きたくてしょうがない状態になり、どんどん質問する。

社長もまさかこのエピソードに興味を持ってくれる人が現れるとは思ってなかったのか、今までで一番乗って語り出す。

社長は、洗剤に愛着があり、世界各国の出張の際には、自分へのお土産でその国の洗剤を持って帰る。

日本ではその国の事を洗剤で思い出しているようだ。

海外へ出張する時も、日本の洗剤を持参するとのこと。

さらに汚れた洗濯物がどの洗剤と相性がよく、どんな風に汚れが落ちるかを考えている時間が楽しいらしいく、日々試しているようだ。


聞けば聞くほど僕はこの社長が、同じ人間なんだなと思えて、人として一気に好きになる。

この社長がどれだけ仕事で功績を出したかも、女にモテるかも、どうでもよくて、洗濯や洗剤への愛着を語る時の笑顔が一番輝いていて人間味を感じる瞬間だった。

僕はそういった人間味のある人が好きだ。

そんな社長から「君の趣味は何かあるのか?」と聞かれて、

「サウナが好きです。好きすぎて県内では物足りずに県外まで遠征に行きます。サウナも、場所によって、水風呂、サウナの温度、外気浴の椅子の数、動線、コンセプト等施設で違うのでそこが楽しいです」とコメントする。


社長からは「君変わってるねー!」と言われるが、それだけは「お互い様だろ!」と激しく思った。


僕は変わってるし、狂っている自覚を持ったサウナーだか、社長は洗剤意識の高い洗濯愛好家だ!

むしろ外から見たら同じ部類の変わっている人のカテゴライズにはいるからお互い様だ!


そんなことも思いつつ、社長とのくだらない会話が楽しく、また会えたらいいなと思う夜だった。









   

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