力いっぱい
朝起きて、シャワーを浴びたり、歯磨きをていて、ふと思い出した話をする。
子供の頃、父と一緒にお風呂に入ったら、石鹸で体も洗うが、シャンプーを使わない。
頭も石鹸で洗えばいいという発想でいる人だった。
力いっぱい高速で頭を洗うから、頭皮と髪をあえて傷つけに行くストロングスタイルだ。
髪を洗うその姿は何かと戦っていた。
そのせいか、物心がついたときから父の髪の毛はいつだってキシキシだ。
歯磨きをするときだって戦っていた。
父はいつだって、歯ブラシで力いっぱいゴシゴシ歯を磨く。
毎回、口の中の歯磨き粉を洗面台に吐き出す頃には、白いはずの歯磨き粉なのに血が交り、洗面台がピンク色に染まる。
子供の頃の僕は、父にとっての歯磨きや洗髪などの日常生活が戦いなのだと認識していた。
一体何がそこまでさせるのか、なぜ戦っていたのかわからない。
そんな父に、せめてシャンプーを使うようにプレゼントした。メントールの効いたもので、洗髪後はさっぱりするのでおすすめした。
父は大変喜んだ。
「あのシャンプーよかったよ。お風呂上がりにあれを体に塗ってから、シャワーで流して外に出ると涼しいね!いい締めになったよ、ありがとう」
そんな感謝の言葉を口にしたが、使い方をたいぶ間違えている。
相変わらず石鹸で髪を洗髪することは変えていなかった。
なぜそのストロングスタイルにこだわっていたのかよくわからない父だった。
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