【備忘録】汝、星の如く
・「また、しゃべろうや」(P42)
・いくら相談しても、現実は1ミリたりとも動かない。結果、こっちの心労が増すだけなので放っておいてほしい(P59)
・始めて飲んだのは中学生のときから、酒は手っ取り早く現実を手放すための手段でしかなかった。(P63)
・沸々と理不尽さが込み上げてくる。ほとんど壊れている「家族」の輪郭を、かろうじて保つためのパーツとしてわたしがいる。正座の姿勢でスカートの太もも部分をぎゅっと皺が寄るほど掴んだ。(P 74)
・一方で、暁海もこれくらいバカならよかったのにと思った。その事実が驚くくらい俺を痛めつけている。
男のためにすべてを捨てる母親をバカだと思っているのに、俺は暁海に母親と同じ馬鹿な女になることを求めている。俺も母親や暁海を苦しめる身勝手な男のひとりだった。(P98)
・趣味だった刺繍がいつの間にか仕事をもらえるようになったには、何年も勤めてもアシスタント止まりの仕事や、先細りするばかりの恋愛からの逃避をいう理由が大きい。焦燥という糸を操り、細い針で不安を埋め尽くしていく。
そうして浮かび上がる煌めく草花や雪の結晶や夜空の星が、わたしの暮らしの中にあるたった一つの『美しいもの』だ。(P139)
・いつだって核心は言葉の届かない深い場所にある。‥‥‥
浮気が常習化していても喧嘩のひとつもしない。収穫されなかった果実がゆっくり腐っていくような関係だ。(P146)
・もう、ひとりで会社と戦いたくない。
月末にお金の心配をしたくない。
将来が不安で眠れない夜を過ごしたくない。
稼ぎのある男と結婚したい。
専業主婦になりたい。
子供を産んで夫の庇護の下で一生安心していたい。
全ての本音を並べたあと、ふっと我に返った。
「‥‥お母さんとおんなじだ」(P159)
・「認めたくないんだよ。自分たちの息子がゲイだって」
「問題がすり替わっとるやん。」(P174)
・絵理さんは完璧な自分を保つために、あるいは奮い立たせるために、自分を正しく機能させる装置として俺を必要としている。
いつか妻と別れるなんていう不倫男の徐投句を信じて縋る愚かな女である自分を、人生に挫折中の年下男を支える優秀で寛容な編集者という演出で打ち消そうと足掻いている。クールでも知的でもなく、逆に感情的だ。(P210)
・息を抜きたいであろう恋愛では馬鹿を見ている。賢いはずなのに、燃費の悪い生き方をしている。
ーそらガス欠にもなるわな。
ーどっかで補給せんと止まってまうわな。(P211)
・母親にとっての安心材料は「俺」ではなく「俺の稼ぐ金」なのだとわかっていた。(P211)
・処し方はわかっている。抗うから波立つ。ただ許して受け入れればいい。
受け入れることの中で自分の中の一部が押しつぶされて歪んでいくけれど。歪みなく生きることの方が難しい。そんなことを誰かと話したい。(P211)
・母親が涙をこぼす。親に泣かれるには心底つらい。自分の小ささに絶望し、逃げるように部屋を出た。どうして私はこんなに力がないのだろう。(P230)
・みんなが知ったら、私たちはまた群れから追放されるのだろうか。
以前はそれが怖かった。けれど今は思う。群れから追放されたって、ここが世界のすべてじゃない。ー自分を縛る鎖は自分で選ぶ。(P294)
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